*1『バルパライソの長い坂をくだる話』
KYOTO EXPERIMENT2017のメインプログラムとして京都芸術センターの講堂で2017年11月に初演されたスペイン語上演作品(日英字幕付)。南米、沖縄、小笠原、オーストラリアほか各地で実際に神里が見聞きしたエピソードをもとに台本が創られた。出演者は神里がアルゼンチン滞在中に知り合ったアルゼンチン人俳優(マルティン・チラ、マルティン・ピロヤンスキー)、ダンサー(マリーナ・サルミエント)、以前から知り合いだったブラジル人ダンサー、エドゥアルド・フクシマを加えた4名。
父が散骨を希望したために、チリのバルパライソの海岸にやってきた母と息子。母は父の死を受け入れられないのか、散骨に反対なのか、車から出てこない。後から散骨を手伝うという男二人がやってくる。車の中で宙を見続ける母の横で、三人の男たちは、死してなお越境する人間の話、好奇心のために太平洋を越えた遙か昔の人類のこと、南米パラグアイで観測された皆既日食のこと、沖縄の地で戦没者のお骨を発掘する男、小笠原でバーを経営する男の話などが語る。
背景・車・船などの舞台美術はポップな書き割りの絵を用い、天井を万国旗で飾った客席に、二段ベッド、二等船室、バーカウンターなど台詞で触れられた物を設置。観客は自由に場所を選んで観劇する。
*2 岡崎藝術座
神里雄大が、自身の演出作品を上演する目的で2003年に結成した。結成時に神里が友人の岡崎誠二に借金をしていたため、岡崎誠二が座長となり、その名前が使われている。現在は、神奈川・東京・京都を拠点に、神里の個人ユニットの形で活動を行っている。
*3 利賀演出家コンクール
2000年から、富山県利賀芸術公園を会場に行われている、既製戯曲の上演を競うコンクール(2008年から「利賀演劇人コンクール」に改編/主催:(公財)舞台芸術財団演劇人会議)。神里は2006年、『しっぽをつかまれた欲望』(作:パブロ・ピカソ)により最優秀演出家賞を最年少で受賞した。
*4 坂口恭平
1978年熊本県生まれ。作家、建築家。早稲田大学理工学部建築学科卒業。2000年代半ばから、日本の路上生活者の生活の研究をもとに写真集『0円ハウス』(リトルモア刊)、『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(角川文庫)などを発表。東日本大震災直後に熊本に移住、2011年5月、独立国家の樹立を宣言し、新政府総理大臣に就任。『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)にその経緯や思想を著す。その他、小説、アート、音楽など多岐に渡る領域で活躍している。現在、福岡県在住。
*5 dot architects
家成俊勝、赤代武志により2004年に設立された建築家ユニット。大阪・北加賀屋の「コーポ北加賀屋」を拠点に、建築、アートプロジェクト、会場構成など多岐にわたる活動を展開。2015年ベネチア・ビエンナーレ日本館出展作家。KYOTO EXPERIMENT、瀬戸内国際芸術祭のほか国内外の芸術祭に多数参加している。
*6 新作『ニオノウミにて』
2019年10月にKYOTO EXPERMENTで初演された最新作。神里が京都で、飲み屋の客から琵琶湖に外来魚・ブルーギルが生息するようになった経緯を聞いたことをきっかけとしてリサーチを開始。琵琶湖に浮かぶ島を舞台とする能『竹生島』を下敷きに、琵琶、沖縄三線、三味線と歴史的・地域的変遷を経て形を変える三絃楽器のエピソードなどを盛り込み、固有種と外来種、オリジナルと混交、生物の生態系、「内と外」についての新たな思考を促す。
神里雄大/岡崎芸術座『バルパライソの長い坂をくだる話』(初演)(2017年/京都芸術センター講堂)
撮影:井上嘉和
神里雄大/岡崎芸術座
『+51 アビアシオン, サンボルハ』
(2015年/STスポット)
撮影:富貴塚悠太
神里雄大/岡崎藝術座『ニオノウミにて』
(2019年/京都芸術センター)
撮影:井上嘉和
提供:KYOTO EXPERIMENT事務局