国際交流基金 The Japan Foundation Performing Arts Network Japan

Presenter Interview プレゼンターインタビュー

2008.9.3

The IETM network, contributing to the promotion of collaborative commissioned works and tours in Europe

ベルギー

ヨーロッパにおける共同委嘱やツアーの進展に寄与
IETMのネットワーク力

マリー・アン・ドゥブリーグ(Mary-Ann DeVlieg)
IETM事務局長

舞台芸術プロデューサーたちの国際的なネットワークの構築を目的に、1981年にベルギーのブリュッセルを拠点に設立されたIETM(International Network for Contemporary Performing Arts)。現在では、世界45カ国、450以上の舞台芸術団体等に所属するプロフェッショナルなプロデューサー、ディレクター、アートマネージャー、プレゼンターたちが会員として名前を連ね、数百人の関係者が集まる年2回の本会議やサテライト・ミーティングを世界各国で開催。そのネットワークによりヨーロッパにおける作品の共同委嘱やツアーの進展に寄与している。IETMの事務局長であるマリー・アン・ドゥヴリーグ女史に活動について聞いた。
聞き手:ジャパン・ソサエティー芸術監督 塩谷陽子

IETMは舞台芸術プロデューサーたちの国際的なネットワークづくりを目的としていますが、詳細を説明していただけますか?
 ETMは、「Informal European Theatre Meeting」という名前で1981年にイタリアでスタートしました。ある種、欧州最初の文化ネットワークといえるものでした。イタリアのポルヴォリジ・フェスティバルにフランス、クロアチア、オランダ、ベルギー、イタリアから集まった6名の舞台芸術の関係者が、「舞台公演を観て、それぞれがどんなアーティストの公演を扱っているかについて語り合えるなんていいよね」と話し合ったのがきっかけでした。ポルヴォリジ・フェスティバルは今も続いていますが、当時から小規模ながら世界各国のコンテンポラリー作品を扱うフェスティバルの一つでした。彼らの発想は、若手のヨーロッパのアーティストらの作品を共同でプロデュースし、それをヨーロッパのさまざまな国で上演して広い観客に見せようではないかというものでした。
同じ年のうちに、6人はヨーロッパ各地から100人あまりの関係者とともにパリで会合を開きました。1975年に文化省のイニシアチブで創設された「フランス芸術振興会」の創始者兼ディレクターだったフィリップ・ティリーとIETM発起人の一人の招きによるものでした。IETMの最初の8年間はこうした口コミによって機能しており、枠組みもなければ組織も会則も無い、ボランティア的な運営でした。しかし、この8年の間に活動の基礎が固められたのです。つまり、それは今も私たちがIETMで行っている「同じタイプの芸術とそれを取り巻く問題に興味を持っている人々と出会う」という活動です。
現在、45カ国、450団体のメンバーがおり、私たちの事業も多岐にわたっています。しかし、主たる事業は現在も人々を集め、アーティストやテーマについて共通した興味を持つ人々が出会い、協働し、共同プロデュースをし、ツアーをし、情報交換し合える環境を提供することです。IETMのメンバーは、ホール・劇場の担当者、ダンス・カンパニーや劇団の人、フェスティバルの担当者、プログラミングの担当者、プレゼンター、あるいは舞台芸術関係を担当する市や国レベルの行政関係者です。彼らのこうした出会いはごく自然に起こります。
IETMができる以前は、ツアーをオーガナイズするとか共同委嘱とかのシステムはヨーロッパにはなかったのですか?
 もちろんツアーは行われていましたが、国内巡回がほとんどでした。しかも、どこの国でも行われていたわけではなく、また、ドイツなどでは今でも「国」というよりは州や郡の中でのツアーに限られていました。近頃は少し変化してきていますが。それから共同委嘱というのももちろん存在していましたが、ほとんどはオペラのようなスケールの大きなもので、小〜中規模のものや実験的なプロダクションではなかった。ヨーロッパにおいては、そこは多分にIETMによる貢献が大きいと思います。
例えば私がIETMのメンバーで新作の企画をもっていたとして、IETMは具体的に共同委嘱先やツアー先を紹介してくれるということですか?
 そういう手助けをする場合もありますが、私たちのネットワーク内には2000人ものメンバーが活動していますから、一人一人の動向を把握することはできません。そこで、そういう人たちのために「ワーキング・セッション」というネットワーク・ミーティングの開催という環境整備をするのです。また、既存の作品を売り込むのではなく、「現在どのようなプロジェクトを手掛けているか」や、「どのようなプロジェクトを始めようと計画しているか」を知らせるプレゼンテーション・セッションも行います。できるだけ格式張らずにやることで、協働できるパートナーと巡り会えるよう工夫しています。
それらのセッションは、IETMの総会の一部として行われるのですか?
 私たちが「総会」と呼んでいる大きな正式な会合は年2回開催されています。450〜600人ほどが参加し、15〜40の公演と、45のワーキング・セッションやトレーニング・セッションが4日間にわたって開催されます。そこで制作過程にあるプロダクションやアイデアを紹介するセッションもあります。また「サテライト・ミーティング」という会合を、年に2〜6回ほど、それぞれ個別のテーマに沿って開催しています。この会合では、ワーキング・セッションに加えて、各種のワークショップや舞台公演が行われます。
人々がどのようにして“出会う”ことができるのか、もう少し詳しく説明していただけますか?
 わざと少し皮肉って、「酒場」構造を目指すと言っているのですが(笑)。つまり、酒場やバーでは、出会いがほしいと思えば簡単に誰かに出会えるでしょう? でも、中には内気な人がいて「壁の花」になったりする。そのために、テーマ別にワーキング・セッションを設けて、そのテーマに共通の興味を持って参加した人たちの間でディスカッションを起こします。それによって出席者は他の人の興味や意見を知ることができます。
それと、みんな、総会のときに面談できるようそれぞれが自主的に連絡を取り合っています。もしもヨーロッパで共同委嘱やツアーを仕込みたいと思えば、何カ所もの都市を飛行機で飛び回って各地でパートナー候補とミーティングをしなければなりませんが、IETMの会合に出席すれば一度に多くのパートナーと会えるわけです。
米国でも、毎年ニューヨークで行われるAPAP(Association for Performing Arts Presenters)の年次総会の時にプレゼンターたちは同じことをしていますので、IETMのそういう役割はよくわかります。でも、APAPの場合、出席者の数も上演される公演の数も膨大になりすぎて、翻弄されているというのが現状です。自分の抱える複数のプロジェクトについてのミーティングをしようとアポ取りをすると当時に、他の多くの人からも、彼らがそれぞれ抱える将来的なプロジェクトについてのミーティングのリクエストを受けるわけです。その結果、気違いじみた忙しさに見舞われる。「出会いの場・機会」も規模が大きくなりすぎると、逆に役割を果たせなくなりますが、IETMではこういう問題は生じていませんか?
 それはあります。ただ、IETMはAPAPの4分の1の規模ですし、メンバー募集も口コミベースで、パブリシティーもあまりしません。とは言うものの、私の在任している15年の間にIETMの規模が拡大しているのは事実です。ですので、コミュニケーションの質を保つこと、設立当初からのネットワークの特徴である寛容さや結束の意識を失わないことを心がけています。また、大きくなると共に、IETMのメンバーたちは、「IETMは会議」であり「そこへ行けば何かを与えてくれるだろう」と考えるようになってきました。しかし、そういう期待でIETMに出席した人は、失望すると思います。なにしろ、IETMは人々が「自分たち自身で」何かを作り上げる場ですから。そこが会議とネットワークとの違いです。私たちはメンバー各々にこの機会を有効利用し、すべての人への健全な環境を築こうとする積極性と行動力を求めます。そういう理由から、IETMは「サービス・オーガニゼーション」ではありますが、自分たちではそうは名乗らないことにしています。今後数年かけて、私たちはIETMをメンバーたちが行動的になれる「メンバー・オーガニゼーション」にし、メンバーのイニシアチブにより導かれる組織にしていくつもりです。
IETMという組織の運営体制を伺いたいと思います。予算やスタッフの数は? それからIETMがブリュッセルに本拠を構えている理由を教えていただけますか?
 IETMの運営予算は、年間35万〜50万ユーロです。ただし、総会などの会合は開催地のパートナーとの共催なので、この数字は、共催者が現地で調達する資金や経費を加えることで倍加します。つまりこれを含めれば、年間運営予算は約100万ユーロ(約1億6000万円)ということになります。
最初に述べたように、IETMの最初の8年間は、まるでパーティーみたいにフェスティバルのたびにあちこちに集まってはミーティングを開催していました。その頃はちょうどアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルや、ヴィム・バンデケイビュス、ヤン・ローワース、ヤン・ファーブルといったダンス・アーティストが登場した、いわゆる「ベルギー・フランダースの波(フレミッシュ・ウェーブ)」が起こり始めた時期で、フランダースのプレゼンターたち自分たちの組織を立ち上げようとしていました。のちにそれが、フレミッシュ・シアター・インスティテュートとなります。この団体のディレクターに就任したのが、IETMの創設者の一人です。彼が「IETMのために、私のオフィスの一角と、自分のスタッフを時々使っていいですよ」と言ってくれたことが、今もIETMがブリュッセルに本拠を構えている理由です。多くの人々は欧州連合がブリュッセルにあるからだと思っていますが、それが理由ではありません。
IETMには、さまざまな国から集まった20人〜25人のボードメンバーによる理事会があります。そのうちの6人が「デイリーボード」と呼んでいる常任理事に指名され、この6人が理事会を招集します。そして25人でネットワーク全体の責務を担うという構造です。私を含めて事務局スタッフは5人。3人の正規スタッフと、任期1年のスタッフ2人、加えてインターンがいますから、総勢8人ほどになりますね。非常に小さな体制ですが、当初は1、2人のスタッフしかいなかったことを思えば今や大所帯です。小さい組織だからこそ、私たちは会合を開催するために共催者らパートナーたちと何から何まですべてやらざるを得ません。
貴女はどうして今のエグゼクティブ・ディレクターのポジションについたのでしょう?
 IETMの前は、主にコンテンポラリーダンスや音楽劇、そして時々バレエの公演のツアー企画や、プログラミングをしたりするという仕事に従事していました。その後、イギリス南西部のアーツ・カウンシルでダンスと実験的なパフォーマンスの事業を担当しました。その頃、ヨーロッパの文化行政についての修士号取得のための勉強をしていましたので、ヨーロッパにおける共同制作の現場を見たいと思い、そういった作品を作っている人たちに修士論文のためにインタビューをしていたんです。興味深い作品をつくる人たちは皆IETMのメンバーだったのです。それで、IETMは面白い組織に違いないと思い、自分もメンバーになりました。その後、事務局長(Secretary General)のポジション---ヨーロッパの慣習でエグゼクティブ・ディレクターとは呼ばないのですが---に応募したところ、採用されたわけです。
2008年の3月に東京でサテライト・ミーティングが開催されました。その前の年はソウルで、その前は中国でした。IETMはヨーロッパの国々が中心のネットワークだと思いますが、なぜアジアで開催するのですか?
 「インターナショナル」と組織名に付けているにも関わらず、IETMのメンバーの85パーセントはEUと非EUを含むヨーロッパ圏の人々です。つまり、15パーセントは他地域圏のメンバーですから、ヨーロッパの状況とそれ以外の世界の間の架け橋をつくりたいと考えています。ヨーロッパ圏のメンバーが、アジアでは誰に会って、何を観るべきで、何を討議すべきなのか知る機会を設けたいと思いました。その逆も同様で、アジアのプレゼンターがヨーロッパとコラボレーションをする機会がもっと増えるようにと考えています。
お察しのように、会合の開催には多額の資金が必要です。その資金は、開催地のパートナーがファンドレイジングします。ほとんどのパートナー、つまりIETMと共に会合を開く共催者は、IETMのメンバーです。開催地は開催を希望するパートナーが名乗りを上げ、最終的に私たちの理事会で決議します。地理的なバランスは考慮しますが、こちらからほとんどアプローチをしたことはありません。常にいくつかの候補者が自ら名乗り出てくれますし、時には非常に若く小さな団体が野心的に名乗り出てくれることもあります。そういう場合には「まだちょっと早いかもしれない、何年か様子を見て、共催できる体力がつくまで待ちましょう」と示唆することもあります。
開催地での上演プログラム内容に、IETMは関与するのですか?
 いいえ。総会にしてもその他の小さな会合やサテライト・ミーティングにしても、芸術的な部分の判断は開催地の共催者に任せます。私たちが口を挟むとすれば、「国際的なプレゼンターにふさわしい作品を見せてほしい」ということと、抜粋バージョンではなくフルレングスで作品を上演してほしいということぐらいです。いずれにしても芸術的な部分の判断は、共催者に一任しています。
東京でのサテライト・ミーティングの感想はいかがですか?
 異文化の出会いという観点から興味深かったのは、ヨーロッパ人はよくしゃべって大いに質問をするというのに対して、日本人は静かで聞くことに徹しているということです。我々ヨーロッパ人はこのことについて、おそらく日本人は質問攻めにすることは礼儀に反すると感じているのかな、と思いました。この経験をふまえて、もしまた会合を日本で開くことになれば、日本人とヨーロッパ人とがより深く論議を交わせるよう、各種のセッションをもっとずっと小さな規模に分けていくべきだろうと思います。
各種の会合をさまざまな場所で開催することのほかに、IETMはどのような活動をしているのでしょう?
 IETMは政治の面で非常に活動的で、ヨーロッパ圏という範囲において実に多くの唱導活動をしています。また舞台芸術環境のヨーロッパにおける向上のために多くのロビー活動もしています。
「政治の面で活動」や「ロビー活動」というと、具体的にどのような行為を指すのですか?
 「政治の面での活動」としてはさまざまな諮問委員会の役員として参加する、諸団体の理事を務める、ヨーロッパ内外の文化政策シンクタンクと協働するといったことを行っています。例えば、私が12人のメンバーの一人として務めていたEUの諮問委員会では、「今後10年間、若者・学生・研究者・アーティストなどがヨーロッパ内で活動しやすくするための勧告案」をEUに提言するため6カ月間かけて準備をしました。
また、芸術支援の諸法令を研究して、実際には効力が発揮されていない政策や、現代舞台芸術をめぐる環境の向上が阻害されていないかを調査します。企業が行っている各種の助成や支援の状況について調査し、いかに役立てるかを提言したりもします。例えば、ベルリンの壁の崩壊後は、東欧や中央ヨーロッパの環境は向上するだろうと誰もが思っていました。実際には資本主義・自由主義社会において公からの助成は減少し続け、民間からのスポンサーも増えていない---このような状況を非常に憂慮しています。
これらの調査を会合で報告したりしています。時には、問題の根はどこにあるのか、より深い研究を外部に依頼することもあります。そして、各レベルの政府機関や財団、企業を対象にした勧告・提案を作成し、政治家や財団や大企業の門を叩いて、「これがヨーロッパの将来構想ですが、ご賛同いただけますか? 参加していただけませんか?」と陳情に行きます。IETMは単なる交歓の場所ではない、もっと多面的な活動をしています。
共同委嘱について伺いたいのですが、プレゼンターやプロデューサーたちが行動的になって彼らが密接なネットワークで結ばれた時に、ある種の負の効果が発生する…といった問題を感じることはありませんか? 例えば、国際的なプレゼンターがたまたま発見して気に入ったアーティストが、彼が仲間に呼びかけることにより一瞬にして「誰もが欲しがるアーティスト」というステータスに急上昇する現象が起きます。こうした問題をどう考えていますか?
 そのことは私たちのネットワークでも何度も議論されています。要因はいくつかあって、まずは「クリネックス現象」というもの。誰が最初にこの言葉を使い始めたのか忘れましたが、つまり、誰もが「次の新しいもの」を必死になって探していて、そしていざ発見すると、それをヒョイとつまみあげ、鼻を拭いたらポイと捨てる。ちょうどティッシュ・ペーパーを次々に箱からつまんで捨てるのと同じような行為です。これは若手や未熟なアーティストにとって非常なプレッシャーになってしまいます。
とはいえ、私たちが「責任あるプロデュース」と呼んでいるものも存在するのです。共同委嘱者たちは、ただ単に共同でお金をつぎこんで新しい舞台作品を安価で手に入れるだけなのか、それとも彼らはアーティストと膝をつきあわせて話し合いながら彼らの作品づくりを支え、導いていくのか。どちらのタイプのプロデューサーも存在すると思いますし、ありがたいことは、良いプロデューサーは良いほうのやり方を実行しているということです。また、若いアーティストのほうが、「1年間休み、自分が以前に何をしていたかに立ち返りたい」」という場合もあるでしょうし、理解のある出資者がそれを支援することもあるでしょう。
もう一つ負の現象として指摘されているのが、「マフィア現象」と呼ばれているものです。ある種のアーティストたちの作品はそこかしこで上演されているのに、美学を異にする人々の作品は全く受け入れられない---つまり、一定の美学が業界で一般化して固定してしまう現象です。また、「新植民地主義現象」というのもあります。プロデューサーが「自分の価値観に照らしてこの作品を眺め、そして判断を下したのだ」というもので、特にその作品に対する深い理解もなく、単に自分の国には見かけない(エキゾチックだ)からという理由だけで外国の作品を上演する。IETMはこのことに懸念を抱いていて、「プレゼンターたちがちゃんと作品を理解すればひいては観客も深いレベルで作品を理解できる」ということをプレゼンターたちに理解してもらえるようサポートしていきたいと思っています。
しかし、プロデューサーやプログラムの企画者たちのすべてがこういった問題意識を共有しているわけではありません。だからこそIETMではこれらの問題を過去6年間にわたってセッションのテーマに取り上げてきました。でも、問題への認識があったからといって、それがそのまま行動につながるとは限りませんから、たえず問題を喚起し、経験を共有することが大切だと考えています。人々がこの問題について話し合い、細やかに意識を働かせることも重要です。乗り越え、議論していくことによってまた別の視点が生まれる。同時に、誰の声が人々の耳に届いていないか? どうすれば彼らの意見も人々の耳に届けられるか? ということにもIETMは非常に気を配っています。ネットワークが拡大するにつれて、往々にして口の減らないおしゃべり屋さんの声ばかりが聞かれるようになってしまいますからね。
つまりIETMは「問題にはこう対処すべき」という指針を示すのではなく、「問題意識を喚起する」ことが役割であって、その解決方法や新しい指針についてはメンバーたちが自ら話し合って、彼ら自身が定めていくということですね。
 これまで、私たちは「IETMは人々に出会いの場を提供する」という受け身的な役割でしたが、2000年と2002年に改革を行い、(組織の使命を明確にする)ミッション・ステイトメントを書き直しました。今日の我々の仕事は、ただ場を提供するだけでなく、会合の核心であるディスカッションにより「メンバーを刺激し鼓舞する」ことだと考えています。つまり、IETMの使命は、「機会をメンバーに与え、かつ、刺激し、鼓舞する」ことなのです。
つい最近ITEMで行ったアンケートでは、会合で得るものといえば、インスピレーションであるという意見がすべてでした。私たちとしては、「知己を得ること」という回答になるだろうと思っていたのですが、そうではなくて、「他の人々が何をしているのか」「何が起こっているのか」「何か新しい傾向はあるのか」等々、4日間で耳にすることから得る「刺激」が一番の価値だというのです。そこで、新鮮な気持ちで地元に戻る。他の人がしていることを真似ようというのではなく、自分が受けた刺激を形にしようと思うわけです。
個人的な興味からの質問ですが、プレゼンターたちは演劇というジャンルをどう扱っているのでしょう。ダンスは言語の壁がないので国際化しやすいですが、演劇はそうはいきません。とはいえヨーロッパには多言語とつきあってきた長い歴史がありますから、そのあたりはいかがでしょう?
 IETMの会合の中で何度も取り上げてきている問題です。ここ何年もの間、ヨーロッパのプレゼンターたちは非常に優れた字幕システムを作りあげてきました。公用語が3つあるベルギーでは、舞台に3言語の字幕を備えることもたびたびあります。
また、演劇作品の翻訳のための資金調達についても、討議の俎上に載ります。マイナーな言語からマイナーな言語への翻訳とか、マイナーな言語をメジャーな言語に訳すとか、そういう特別な部分での助成はいくつか継続されています。ちなみに、ここで「メジャーな言語に訳す」と言う場合に英語は含まれません。英語はすでに覇権的ですから。IETMの中から独自の小さなネットワークが生まれることも多々あって、それを私たちはIETMの「触媒効果」と呼んでいますが、戯曲の翻訳支援に関しても二つ小さなネットワークが生まれているほどです。彼らはプロジェクトベースで活動をしています。このような側面においても、IETMは新しいネットワークやプロジェクトの「孵卵器」として機能しているんですね。
最後に、ネットワークということを核とするIETMにとっては、「インターネットをどう活用するか」ということは現在も将来も常につきまとう課題ではないかと思います。どのように考えていらっしゃいますか。
 現在、来年の刷新のために助成金の申請を提出したところです。新しいウェブサイトはテキストよりも視覚的要素を増やし、動画クリップや音声を多用したいと思っています。長いテキストを読むよりも、1分かそこらのポッドキャスティングがあったほうが効果的でしょう。
ウェブ上で多くの人々が出会える仕組みをつくりたいですね。個人的には、環境に配慮して、IETMのバーチャル会合ができるようになればと夢想しています。移動にはお金もかかりますから、誰もが利用できるとはかぎらない。しかし、同僚たちには「4日間、ずっとコンピューターと向かい合って過ごすなんて、退屈極まりないよ」と言われますが(笑)。
ブログについては、最近、一時的な討論の場として「ラフト(いかだ)」という名前のウェブプラットフォームを立ち上げました( http:// raft. idanca. net/ )。ただ、IETMのメンバーたちは、こういうインターネットの使い方はあまりしない人たちなのは確かです。このプラットフォームも私たちはメンバー同士のコンタクトが目的ですが、それは自然発生的に行われています。私たちが強制することはありませんから。
長い時間、どうもありがとうございました。将来のますますの発展を期待します。

●次回のIETM総会日程
IETM 秋の総会
開催日程:2008年11月6日〜9日
開催都市:スイス・チューリッヒ

2008年秋のIETM総会は、スイスのチューリッヒで11月6日〜9日の日程で開催される。スイスでのIETM総会は1992年にジュネーブで開催して以来、16年ぶり。今回は、EUが提唱する「European Year of Intercultural Dialogue(EYID)2008:ヨーロッパ異文化間対話の年」( http://www.interculturaldialogue2008.eu/ )のパートナープログラムとして開催される。この総会のテーマは「Misunderstanding 誤解」。IETM総会期間中は、チューリッヒ市内の10の劇場で、スイスの最新舞台芸術シーンを見渡すことのできる演劇、ダンス等さまざまな公演が行われる。400〜600人のメンバーが参加する予定。
IETMチューリッヒ総会のプログラムなどは、 http://www.ietmzurich.ch/ に掲載されている。参加登録はIETMホームページ内の登録ページ( http://register.ietm.org )より可能。

● コンテンポラリー・パフォーミングアーツ国際ネットワーク会議「IETM@TPAM」採録集
コンテンポラリー・パフォーミングアーツ国際ネットワーク会議「IETM@TPAM」採録集 コンテンポラリー・パフォーミングアーツ国際ネットワーク会議の東京サテライト・ミーティング「IETM@TPAM」は、東京芸術見本市2008の併設事業として2008年3月3日〜5日の3日間にわたって開催された。IETM@TPAMのすべてのレクチャーおよびセッションの内容を記録した「IETM@TPAM採録集」は以下のサイトからダウンロードできる(英日とも公開中)。
トップページの右下、「IETM@TPAMレポート」をクリックしてご覧ください。
http://www.tpam.or.jp/
http://www.tpam.or.jp/ietm/ietm.html

● 東京芸術見本市2009 開催日程
会期:2009年3月4日〜7日
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール/ルーム
「TPAMショーケース」:
2009年2月28日〜3月8日
東京芸術見本市ホームページ:
http://www.tpam.or.jp/