イキウメ『関数ドミノ』
(2009年5月8日〜24日/赤坂RED/THEATER) ©田中亜紀
Data
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[初演年]2005年
[上演時間]1時間45分
[幕・場面数]1幕17場
[キャスト数]10人(男7・女3)
前川知大
関数ドミノ
ⓒ 阿部章仁
前川知大Tomohiro Maekawa
1974年新潟県柏崎市生まれの劇作家、演出家。東洋大学文学部哲学科卒業後の2003年に活動の拠点とする劇団「イキウメ」を結成。SFや哲学、オカルト的な世界観を有した独自の作風で常に話題を集め、国内の演劇賞を多数受賞する。
そんな国内での活動に加え、2019年に韓国・ソウルで『散歩する侵略者』、2021年には『太陽』が韓国人俳優により上演された。2023年に国立チョンドン劇場で『太陽』が再演された際には、ダンス作品の『太陽』もあわせて上演されている。
2022年、フランス・パリでのイキウメの海外公演『外の道』も好評を博し、近年ではさまざまな言語(フランス語、韓国語、スペイン語、英語、ロシア語、アラブ語、中国語)での翻訳版の出版が続いている。2023年上演の舞台に対して贈られる読売演劇大賞では『人魂を届けに』が最優秀作品賞を受賞。(2024.4更新)
不可解な交通事故が起きた。曲がり角を減速しないまま突っ込んできた車が、歩行者の5センチ手前で、透明な壁に阻まれたかのように大破したのだ。歩行者は助かったものの、この事故のために運転手・新田の恋人が助手席に座っていて大けがをしてしまう。
保険調査員の横道は、論理的にはあり得ないこの事故の調査を命じられ、事故の目撃者を集めて何度も聞き取り調査を行う。大けがで恋人が入院したままの運転手・新田直樹、車に轢かれるところだったにもかかわらず助かった田宮尚偉、一緒に歩いていた田宮の友達で小説家の左門森魚、歩道橋の上からすべてを目撃していた真壁薫と秋山景杜の5人は、今日も一室に集められ、横道のヒアリングが始まった。
何一つ事態が明らかにならないまま、森魚と尚偉が途中退席した後、薫と景杜は万能の力をもつ期間限定の神「ドミノ」について語り出す。この世はドミノを中心にして回っていて、ドミノが念じるとその思いの強さによって運命を思うままに変えることができるというのだ。しかし、本人にはドミノとしての自覚はなく、その力はひっそりと他の人に移っていくため、その存在は誰にも気づかれることがない。今回の不可解な交通事故は、友達の尚偉を助けようとして、ドミノの森魚が引き起こした奇跡だというのだ。
この世はドミノの思うままで、不公平だ、ドミノに近づくと巻き込まれて不幸になるという薫と、彼の言葉を信じる景杜は、森魚でドミノの存在を証明する実験をすると打ち明ける実験のため、HIVキャリアの土呂が森魚に近づき、親友になる。森魚がドミノであり、親友の病を治したいと心から念じれば、奇跡が起こるはずだ。一方、東京で編集者に内定した尚偉は、思いを寄せている後輩の平岡泉を一緒に上京しないかと誘うが、小説家を目指す泉は森魚に好意をよせているらしく、断られてしまう。森魚の思うままに事態が進んでいくようで、尚偉は気がきではない。
薫が「ドミノ幻想」なる妄想で心療内科へ通っていることを耳にし、横道たちはドミノの存在を疑い始める。しかし、再び奇跡が起こる。森魚から「治ってほしい」のひとことを引き出した土呂のHIV検査が、陰性になったのだ。恋人が重傷のまま入院中の直樹は、森魚に恋人を直せと食ってかかるが、自覚がない森魚は混乱するばかり。その時、ドミノの正体が明らかになり……。
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