劇作家による自作ガイドvol.5―安藤奎が語る『地上の骨』

劇作家による自作ガイドvol.5―安藤奎が語る『地上の骨』

Ⓒ 山口真由子

2026.09.30

劇作家が自身の執筆作について語る本シリーズ第5弾は、安藤奎(劇団アンパサンド)の『地上の骨』。オフィスでのなんともない日常的なやりとりから、いつの間にか「人間が魚になる」という荒唐無稽な非日常的状況へと滑り落ちていくさまをおかしみとともに活き活きと描くこの作品は、一体どのようにして生まれたのか。安藤奎の創作の源を、これまで劇団アンパサンドの活動をいちファンとして長く追ってきた俳優・長沼航が紐解いていく。


取材・文/長沼航

劇団アンパサンド『地上の骨』


作・演出:安藤奎
出演:黒田大輔、島田桃依、篠崎大悟、安藤輪子、西田麻耶、安藤奎
2023年9月1日~10日 三鷹市芸術文化センター 星のホール


【あらすじ】
夕方のオフィス。仕事に追われる契約社員のミヤビは、先輩社員・安河内からお手製の魚の佃煮を勧められるも、「鹿児島から来た父親と一緒に夕食を食べるから」と断る。安河内をはじめ、チームの面々は互いに「早く帰りな」と気遣い合うものの、実際には皆仕事が溜まっていて帰ることができない。そんな中、安河内は皆に魚の佃煮をお裾分けする。すると、魚の骨が喉に引っかかった安河内を皮切りに、佃煮を食べた社員たちの身に次々と異変が起きる……!


【登場人物】

ミヤビ(安藤輪子):契約社員。安河内が作った魚の佃煮を食べなかった。
安河内(黒田大輔):先輩社員。魚の佃煮を分けてくれる。
土橋(島田桃依):リーダー。マニュアルの作り直しに追われている。
アケミ(安藤奎):ミヤビの同期。
カオル(西田麻耶):土橋と同年代? オーディション番組にハマっている。
友田哲夫(篠崎大悟):ずっとウイダーinゼリーを探している。

  • 安藤奎筆による『地上の骨』 登場人物相関図

2019年にあさくさ劇亭で上演されていた『知るよしもない』以来、多くの作品を拝見してきた安藤さんにこうしてお話を聞ける機会をいただけて嬉しいです。まず、安藤さんの演劇との出会いをお伺いしてもいいですか。
小学生のときに鴻上尚史さんの舞台『リンダ リンダ』を親に連れられて観に行って、それが面白かったんです。大分の田舎のほうに住んでいたので、演劇に触れる機会はそれまで全然なくて、人生で初めての観劇体験でした。当時は身の回りにインターネットもなくて、小学3年生くらいまで、テレビドラマはいろんなお店についてる監視カメラをつなぎ合わせて作っていると思い込んでいたくらい遅れてました。でも思い返せば、田舎で遊ぶ場所も人も知識も限られていたこともあって、近所に唯一いた同い年の友達と2人でずっとおままごとをやっていました。それが演劇っぽいものの原体験ではあるかもしれないです。
それから、ご自身が演劇をやるようになるまでにはどんな経緯があるんでしょう。
中学生のときに岡山に引っ越してからは、少しずつ劇団四季(*1)などの有名な演劇を見るようになりました。高校の頃には上京して演劇をするためのお金を貯めようとバイトを始めて、夏休みなど行ける期間には下北沢(*2)に行って演劇を見ていました。
そのころ目指されていたのは俳優だったんですか。
積極的に俳優になりたかったというよりは、演出家や音響・照明といったほかの仕事の存在を全然知らなくて、演劇をやるには俳優になるしかないと思っていたんです。それで高校時代、演劇系の専門学校のオープンスクールで講師の人に「演劇で食べていきたい」と相談したら、「新劇(*3)の劇団のなかでナンバースリーの俳優になれば演劇で生きていけるよ」と言われたのを鵜呑みにして、その専門学校には行かずに上京しました。でも、最初に受けた俳優座の演劇研究所の試験には落ちてしまったので、まずは演劇研究所に入るための養成所に通いました。
研究所に入るための養成所?
パンフレットには「この養成所に通えば俳優座の演劇研究所に3人は入れる!」と書いてあったのに半年でそこは潰れて、高校のときのバイト代が水の泡になってしまいました。

その後、いくつかの新劇系の劇団の試験を受けて、最終的に演劇集団 円(*4)の研究所に入ることになったんです。研究所には2年通って、1年目は発声練習や小道具作りをひたすらやり、2年目は作品づくり。劇場を使って自分たちで企画する自主公演などもやりましたが、やはり新劇の劇団なので、基本的には著名な劇作家、例えばチェーホフや清水邦夫(*5)の戯曲をずっと扱っていました。その頃知り合った小劇場マニアのおじさんに紹介されて、小劇場演劇(*6)も見てたんですが、おじさんの趣味がディープすぎて私にはあんまり理解できず、それと比べるとチェーホフの『かもめ』のほうが面白かったんです。だから、やっぱりあの講師の人が言っていたように新劇をやったほうがいいんだと思っていました。
そこから劇作を始めて、現在の作風に至った転機のようなものはあるんですか。
大きかったのは、五反田団(*7)の前田司郎さんのワークショップです。円で一緒だった友人に誘われて参加したんですが、それまで青年団(*8)系の劇団には触れてこなかった私にとってはとても新鮮でした。

まず、前田さんは、私が初めて会った「生きている若い劇作家」だったんです。それまでは、戯曲はシェイクスピアのような人が書くものだと思っていたので、途中まで「この人、本当に劇作家なのかな」と疑っていました。それから、円では綺麗にせりふを言ったり、決められた位置に綺麗に立ったり、すでに書かれた戯曲のキャラクターに自分を寄せていくことが重視されていたので、ワークショップでお客さんの反応を感じながら演じるといった経験も、自分にとっては新しかったです。エチュードをやるとその人自身の面白さが伝わってきて、俳優って普段の生活から面白い人がやるものなんだ……と気づかされました。
その後、2016年に劇団アンパサンドを旗揚げされるわけですね。
ちょうどその時期『ゴシップガール』(*9)にハマっていたんです。そのなかで登場人物が友達を集めて華やかなパーティーをするのに憧れて、自分の誕生日にやってみたいと思いました。でも、「集まったあと何するんだろう?」と思って考えた結果、自分は「演劇」をしたいのかもしれない、と思ったんです。それで劇場を押さえて公演を企画しました。
ご自身で作・演出をされたんですよね。何か踏み出すきっかけがあったんですか。
確かに円のときは既成戯曲を使ってたんですけど、自分の団体での公演となると上演許諾の取り方もよくわからないし、それなら自分で書く方が簡単だと思ったんじゃないかな……。ただ、その公演はものすごく評判が悪くて、見にきた友達に「大変だったね……」とか「なんでやろうと思ったの?」とか言われて散々でした。
そんなに酷評されても、書き続けてこられたのはすごいですね。
そもそも私には「自分が怖かったことを人に話して、同じように怖がってもらいたい」という欲求があるんですよね。最初に書いた作品も、実体験をもとにしたホラーでした。脚本という形なら、普段は人に話せないことも聞いてもらえます。それから、自分が無意識に考えていたことに気づける面白さもあります。書いているときはテーマをそれほど意識していなくても、書き終えてから「自分はこういうことを思っていたんだ」と気づくことが多いんです。今では脚本を書くことが一番やりたいです。
  1. 劇団四季

    1953年、浅利慶太らによって結成された劇団。創立当初はアヌイやジロドゥなどのフランス近代劇を上演したが、現在では『キャッツ』『ライオンキング』をはじめとするミュージカルのロングラン公演と全国公演で広く知られる。

  2. 下北沢

    東京都世田谷区にある街。本多劇場、ザ・スズナリ、駅前劇場、OFF・OFFシアターなど中小の劇場が集まり、「演劇の街」として知られる。

  3. 新劇

    明治末期以降、西欧の近代演劇の影響を受け、歌舞伎や新派とは異なる新しい演劇を目指して生まれた運動・演劇形式。戦後は文学座、俳優座、劇団民藝などが代表的な劇団として活動し、翻訳劇や近現代の戯曲を数多く上演した。

  4. 演劇集団 円

    1975年、芥川比呂志を中心に設立された劇団。現在も、国内外の古典から現代劇まで幅広い作品を上演する。付属の円・演劇研究所では、俳優を志す研修生の養成も行っている。

  5. 清水邦夫

    1936年、新潟県生まれ。劇作家・演出家・小説家。1960年代後半から演出家・蜷川幸雄との共同作業で注目を集めた。代表作に『真情あふるる軽薄さ』『ぼくらが非情の大河をくだる時』『楽屋』などがある。2021年没。

  6. 小劇場演劇

    主に比較的小規模な劇場を拠点に、若い劇作家・演出家や独立系劇団が独自の表現を追求する演劇。1960年代のアングラ演劇などを背景に発展し、1980年代には若い観客を巻き込む一大ブームとなった。現在は作風や上演形態も多岐にわたる。

  7. 五反田団

    劇作家・演出家の前田司郎が1997年に旗揚げした劇団。日常に潜むおかしみや哀しさを、力みのない会話と最小限の舞台装置によって描く作風で知られる。代表作に岸田國士戯曲賞を受賞した『生きてるものはいないのか』など。

  8. 青年団

    劇作家・演出家の平田オリザを中心に1982年に結成された劇団。日常の話し言葉、複数の会話の同時進行、抑制された演技などを特徴とする「現代口語演劇」を追求し、1990年代以降の日本の現代演劇に大きな影響を与えた。

  9. 『ゴシップガール』

    2007年から2012年までアメリカで放送されたテレビドラマ。ニューヨークの高級住宅街アッパー・イースト・サイドを舞台に、名門校に通う若者たちの恋愛、友情、家族関係から巻き起こる騒動を描く。

では、『地上の骨』はどんなことを考えて書かれたんでしょうか。
『地上の骨』を書き終わって思ったのは「人情」のことでした。いま世の中で人情というものが失われている。そうやって世界から人情がなくなったことに誰も気づいていないというのが私にとってはとても怖いです。

人情はかつては例えば「寅さん」(*10)に象徴されるように、とてもいいものとされていました。でも、いまはどちらかというと迷惑なものになっていると思うんですね。それがいいか悪いかではなく、人情が失われているという事実そのものをこの戯曲を通して残したかったんだと、振り返ってみたときに気がつきました。黒田大輔さん(という俳優)は、この世で最後の、日本で最後の人情を持っている人なんです。
絶滅危惧種なんですね。黒田さん演じる安河内が魚になるというアイデアは、当初からあったんですか。
そうですね。『地上の骨』は黒田さんの出演が決まっていて、いろいろ想像して「黒田さんが舞台上で魚になるのが見たい」と思ったところからスタートしています。

私が戯曲を書くときは、出てくださる俳優の方々をイメージしながら設定や人物像を作り上げていくことが多いです。この作品については、西田麻耶さんであれば「怒ることで仕事をしている実感を得そう」とか、篠崎大悟さんであれば「すごくいい人なんだけど、次元の違うところに存在して、他人の話をよく聞いてなさそう」とか、そういうイメージが浮かんできて、そこからカオルや友田哲夫というキャラクター造形が生まれました。もちろん、それは私が俳優の方々から得た勝手なイメージなので実際のその人とは違うこともありますが、そうした設定によってそれぞれの面白さが引き出されていると思います。俳優が自分とは違うタイプの行動をしそうな人だと、いろんなアイデアが浮かんで楽しいですね。
  • 『地上の骨』(2023)左から友田(篠崎大悟)、ミヤビ(安藤輪子)、安河内(黒田大輔)

なるほど。アイデアを実現する小道具の面白さやその泥臭い仕上がりも、劇団アンパサンドの特色の一つです。『地上の骨』でも先端に小さな魚をつけた黒い袋を俳優が着るという力業に大いに笑いました。
『地上の骨』の小道具で大事だったのは、魚のリアルさよりも俳優の身体が見えなくなることです。人の姿が見えなくなって魚だけが残る、ということを実現する形としてあれを思いつきました。旗揚げ当初は自分たちで作るしかないので、必然的にチープな感じになっていました。私は不器用なんですが、劇団員の深見由真さんがとても器用で、私が材料と作り方のアイデアを伝えると、いつもとても綺麗に仕上げてくれるんです。
ということは、これから公演規模が大きくなっていくと、もっと高級な小道具になる可能性もあるんですか。
どうでしょう。私は俳優さんが一生懸命頑張らないと成立しないものが好きかもしれません。人力でやっているのは確かに面白くて、そう考えると舞台上で焦っている人の姿を見たくて、ああいう形にしている部分もありますね。魚になるかもしれないパニックでキャラクター同士が大声で議論している様子も、魚になるために俳優が四苦八苦しながら小道具を扱う姿も、私が舞台上で見たいものでした。
安藤さんの作品では職場を舞台にすることが多いですね。
家族の設定で戯曲を書くのがすごく恥ずかしいんです。どんな設定も多少の嘘を前提としてはいるけど、実際には家族ではない俳優たちが家族を演じるのは飛躍が大きくて嘘すぎる。だから、三菱UFJ銀行の石原さとみが木村拓哉に「お兄ちゃん」と呼びかけるあのCM、あれは自分だったら恥ずかしい。だって、あの二人が兄妹じゃないことを、みんな知ってるじゃないですか。私は、恥ずかしいことはなるべくしたくない、という気持ちが強くて。たぶん、人より恥ずかしいと感じることが多いのかもしれません。同じ場所に集まって一緒に仕事をしている俳優さんたちの関係性に近い「職場」という設定なら、自分の中でも納得して書けるんです。職場を舞台にした作品が多いのは、そういうことなのかもしれません。とはいえ、劇作の幅を広げたいので、家族物も書けるようになりたいですね。

そういえば『それどころじゃない』(*11)という作品では、一度だけ夫婦という設定で書きました。血縁関係のない夫婦だったらいけるかと思いましたが、やはり恥ずかしかったです。でも、あれは私の父が体験した実話だったのでしょうがなく……。
えっと、『それどころじゃない』ってどういうお話でしたっけ。
夫が会社に行こうとして首の長い幽霊に取り憑かれてしまって、首が伸びるという話ですね。
  • 『それどころじゃない』(2022) Ⓒ 松下哲也

……。聞かなかったことにしておきます。そういえば、『地上の骨』をはじめ、劇団アンパサンドの作品では安藤さんが作・演出を務めながら、出演もされることが多いですよね。どういった理由によるものなんでしょう。
脚本を書くうえでも演出をするうえでも自分が出たほうが楽なんです。
まず、作家としての視点でいうと、自分には気を使わなくていいというのが大きいです。そもそも、出演をお願いするのは自分が好きな俳優さんたちなので、それぞれの面白さを活かしたくて、全員のキャラクターが濃くなりがちなんです。でも、自分の役なら雑に扱えるので、全体のバランスを調整できる。極端な例で言えば、冒頭で1人死んでほしいと思っても、せっかく呼んだ俳優さんにやってもらうのは申し訳ないですが、自分なら容赦なく殺せるので。

演出面では、外から指示するより、俳優として中に入ったほうが、その場で起きていることを把握しやすいんです。「ここにこの人がいたら、このせりふは言えないな」と、場が停滞する理由も直感的にわかる。実感に基づいて調整できるので、俳優にも納得してもらいやすいのではないかと思います。

そもそも私は、演技を言葉で指示するのが得意じゃありません。「求める演技を演出家が自分でやってみせるのはよくない」とも言われますが、「ここは悲しく」と伝えても、人によって解釈は違うじゃないですか。でも、実際にやってみせれば、私の考える「悲しい」が伝わる。出演者としてさまざまなシーンを一緒に演じた蓄積があるので、そのまま真似るのではなく一つの参照項として受け取ってもらいやすいと思っています。
黒田さんの唾を撒き散らしながらの熱演はとても印象深いです。
黒田さんのような全力でやってくれる俳優さんとお仕事をすると、演出家的な位置から俳優をしている自分とは違う、まさに「俳優」としか言えない人がいるのだと感じます。
  1. 「寅さん」

    山田洋次監督、渥美清主演の映画『男はつらいよ』シリーズの主人公・車寅次郎の愛称。旅暮らしのテキヤで、おせっかいゆえに騒動を起こす一方、義理人情に厚い人物として親しまれた。

  2. 『それどころじゃない』

    2021年の「かながわ短編演劇アワード」で初演され、2022年に長編版が上演された劇団アンパサンドの作品。会社へ行こうとする夫が「首の長い幽霊」に取り憑かれ、身体に異変が起きるなかで、夫婦の日常が予想外の方向へ進んでいく。

『地上の骨』は2026年5月にニューヨークのジャパン・ソサエティでリーディング上演(*12)されていますね。安藤さんも現地でご覧になったそうですが、そもそも安藤さん以外の演出で上演される機会も多くないアンパサンド作品が、海外で発表の機会を得たということでその反応が気になります。
  • 『地上の骨』ニューヨークでのリーディング公演メンバーと(2026)

すごく面白い経験でした。登場人物が魚になってしまう瞬間に、お客さんも「ああ!」とか「Oh my God!」と声を出してショックを受けてくれていたのがとても嬉しかったです。日本だとそういうことはあまりないですよね。また、リーディングでしたけどかなり動く演出で、魚になることも実際に俳優の方が身体で表現していました。自分だったらまずやらないような演出でしたが、身体的強度のある俳優の方々だったので、楽しく観ることができました。

作品中に出てくる「悪霊」という言葉について、稽古で「どの宗教の価値観における悪なのか」と質問されたことも印象的です。日本では「なんとなく悪霊」で済まされるところを、どの枠組みの悪なのか定義しようとする。その違いは面白かったです。
善意や仕事を巡って登場人物同士がすごく気を使いあっています。ある種日本らしい光景とも言えますが、そういう部分はアメリカでも伝わりましたか。
最初は先方のプロデューサーも「すごく日本的」と言っていました。でも、関係性を壊さないために気を使って取り繕うという状況はアメリカでも普通にあるみたいで、例えば私が稽古場に来て「みんなのために手作りクッキーを焼いてきた」と言って差し出したら、何か思うことがあってもおそらくみんな「Thank you」と言って食べるよね、という話にもなりました。仕事については、残業すると能力がないと見なされやすいようで、差はあるのかもしれないです。でも、そもそも日本の職場でも劇中で描かれているほど互いの仕事を引き受け合っているかというと、そうでもないかもしれません。

やっぱり「ウイダーinゼリー」(忙しい際の栄養補給に使われるゼリー飲料の商品名)などの固有名詞や、東京から鹿児島までの距離感といった地理的情報は伝わりにくいですけど、話の流れが理解できないという箇所は思いのほかほとんどなかったです。
今後の活動でも海外での活動を視野に入れていますか。
そうですね。ニューヨークでのリーディング公演の際にQ&Aセッションがあったんですが、みんな積極的に手を挙げて質問してくれました。「『地上の骨』を見た観客に一つ持ち帰ってもらいたい気持ちは何か」「安藤さんが変なのか、日本が変なのか」といった、日本ではあまり聞かれない質問もあって面白かったです。しかも、私が何か言うたびに会場がよく笑ってくれて、これまでの活動の中でも一番ウケたので、その時間が本当に楽しくて……。だから、いまは海外でQ&Aセッションだけやる仕事をしたいですね。
ちなみに、安藤さんが変なんですか、日本が変なんですか。
日本です。
国内での活動も徐々に規模が大きくなっていますね。
2026年秋の新作『立ち止まるには近すぎる』では、初めて東京以外の都市を回るツアー公演をやります。ゆくゆくは、高知県や大分県や岡山県など自分が生まれ育った土地を回りたいんです。先ほども言ったとおり、子どもの頃に演劇に触れる機会がほとんどなかったんですよね。高校生のとき、東京で参加した演劇ワークショップに、関東出身の同い年の高校生がひとりいました。「好きな劇団は」と聞かれて、私は知らないから「劇団四季」と答えたんですが、その子は「本谷有希子」と答えていて……。フルネーム言ってる、かっこいい……と、知識の差にショックを受けました。この公演が、同じような地方の中高生に、もっといろんな演劇を見てもらう一助になれればいいなと思っています。
  1. ジャパン・ソサエでのティリーディング公演

    ニューヨークのジャパン・ソサエティで行われた。英題はEarthly Bones。翻訳はカズエ・ペック、演出はローレン・ゼフテル。終演後には安藤と演出家によるQ&Aも行われた。

【公演情報】

劇団アンパサンド

『立ち止まるには近すぎる』

作・演出:安藤奎 出演:片桐はいり、福井夏、永井若葉、安藤輪子、西出結、安藤奎
東京:2026年10月28日~11月1日 新宿シアタートップス
三重:2026年11月7日~8日 三重県文化会館 小ホール
札幌:2026年11月14日~15日 生活支援型文化施設コンカリーニョ

  • Ⓒ 山口真由子

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