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友吉鶴心 薩摩琵琶演奏会『名ごりの花一看(はないちかん)』(2021年10月28日/浅草ギャラリー・エフ)
薩摩琵琶から広がる
友吉鶴心の思い
1965年、薩摩琵琶奏者の山口速水、友吉鶴心の孫として東京浅草に生まれる。日本の伝統文化・芸能の豊かな環境で育ち、3歳から日本舞踊をはじめさまざまな伝統芸能を学ぶ。84年、日本大学藝術学部演劇学科に入学し、日本の中世の芸能を学ぶ。87年、両祖父の偉業である薩摩琵琶奏者を志し、鶴田錦史に師事。以来、国内外での薩摩琵琶の演奏活動はもちろん、ロックグループ「聖飢魔Ⅱ」をはじめとした多ジャンルの音楽家や表現者とのジョイント、小説家の橋本治書き下ろしによる新作『城壁のハムレット』(琵琶音楽会初のDVD化)、尺八の藤原道山と共演した『エクリプス』『ノヴェンバー・ステップス』、子どもたちへの普及活動、NHK大河ドラマをはじめとした芸能考証、ゲーム音楽など縦横に活躍。文部大臣奨励賞、NHK会長賞等受賞。日本大学藝術学部音楽学科非常勤講師。NPO法人ACT.JT理事。
友吉鶴心 薩摩琵琶演奏会『名ごりの花一看(はないちかん)』(2021年10月28日/浅草ギャラリー・エフ)
友吉鶴心『琵琶名器数々』(2021年10月27日、29日/浅草ギャラリー・エフ)
*1 薩摩琵琶
薩摩琵琶は、薩摩(今の鹿児島県の中の旧国名)の盲僧の琵琶を利用して、武士の修養に役立てるため、島津日新公(日新斎)の作詞と盲僧渕脇寿長院の作曲で創始された。それらの曲は、仏教や儒教の教えを平易に砕いた道徳的なものであった。ところが、その演奏者たちは薩摩武士であり、その後、戦国の世とて、合戦が相次いだので、薩摩琵琶の内容や表現は勇壮なものに変化した。そのため、人の道を諭す倫理的な日新公の作詞も、中国の女性がしみじみ語る身の上を抒情的に綴った白楽天の「潯陽江」も、薩摩琵琶にかかると、悲憤慷慨調になっていった。薩摩琵琶の音楽的な特徴は、絃全体を使って早いテンポで奏する「崩し」という勇ましい手と歌があり、それとは対照的な悲哀の歌(「吟替り」という)もあることである。しかも、義太夫節の発声に近い声量で、腹の底から声を出す歌い方は、普通の邦楽がやや声を控え目に出すのとは違っている。やはり薩摩武士の尚武の精神の影響を受けたのであろう。(吉川英史)
*2 鶴田錦史(つるた・きんし)
1911年〜95年。薩摩琵琶演奏家、作曲家。北海道滝川市生まれ。幼い頃より兄の影響で琵琶を始め、7歳で上京して小峰元水に入門。錦心流薩摩琵琶を習得し、10代で演奏活動と弟子の育成を始めるが、一時期実業家に転身して成功。55年に演奏家として再デビュー。64年に小林正樹監督の映画『怪談』で「壇ノ浦」を自作自演したのを機に作曲家の武満徹と知り合い、67年に武満作曲による『ノヴェンバー・ステップス』を演奏し、国際的な評価を得る。表現力豊かな琵琶楽を求めて楽器の改良や奏法の革新に取り組んだ。
中村壱太郎×尾上右近「ART歌舞伎」海外配信版(2021年)
薩摩琵琶:友吉鶴心
https://md.jpf.go.jp/es/Actividades/Arte-y-Cultura/evento/322/art-kabuki-online
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