ニュー・ミュージカル「カラー・オブ・ライフ」
(2016年3月25日〜31日/東京芸術劇場 シアターイースト)
(C)キティエンターテインメント
Data
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[初演年]2013年
[キャスト]男1・女1
石丸さち子
ニュー・ミュージカル「カラー・オブ・ライフ」
石丸さち子Sachiko Ishimaru
作家・演出家。早稲田大学を卒業後、1986年から93年までNINAGAWA STUDIOに俳優として参加。93年から2008年まで蜷川作品を中心に演出助手・演出補を務める。09年に俳優養成の私塾POLYPHONICを開始。10年に個人のプロデュース母体として、「たくさんの創造力や想像力が、自由に響き合い絡みあって作品を産み出していけるように」との思いを込めて名付けたTheatre Polyphonicを旗揚げ。現代作家から古典、ストレートプレイからオリジナルミュージカルまで幅広い作品を作り出している。2013年7月に自ら作・演出・作詞を手がけたミュージカル「Color of Life 」によりNYで開催されている第14回Midtown International Theatre Festivalに参加。最優秀ミュージカル作品賞、最優秀作詞賞、最優秀演出賞を獲得し、注目を集める。
Theatre Polyphonic
http://polypho.com
ふたりの男女が登場。
女(レイチェル・ビーティ)は交差点の真ん中で倒れこみ、「手を伸ばしても誰もいない」と、恋人を喪った心を歌う。一方、額縁を手にした男(ヒロセカズヤ)は、「僕の目に映るものは、そのまま僕の体の一部になる。だから僕は描かずにはいられない」と絵にかける思いを歌う。しかし、震災後、彼は灰色の世界になった日本を描くことができない。彼は新しい色を探している。
9月12日、NY行きの飛行機で、偶然隣り合わせたふたりはお互いのことを語る。女:NYでひとり暮らしをしている女優であること、大事な友達が死んだこと、子どもの頃に両親が離婚し、日本に住む母に会ってきたこと、一番好きな映画は『あなたが寝てる間に…』であること。 男:自分は画家で、NYに行けば「描きたいことがきっと見つかる」と信じて旅に出たこと。
惹かれ合う予感をもちながら、別れるふたり。東京に戻ったカズヤと国際電話でのやりとりが続き、1カ月後、カズヤはレイチェルと暮らすためにはNYを再訪する決意をする。彼は「NYで“セクシー”と暮らす僕。彼女は最高のマドンナ!」と喜びを歌う。これは彼にとって絵を描くための旅立ちでもあった。一方、レイチェルは母にインターネット電話をかけ、女が好きなのに、男と暮らすことに決めてとまどっていると訴える。
カズヤがNYに到着。NY見物、初めてのキス、そしてそのままベッドへ──。目覚めたカズヤがキャンパスに描いた赤い絵のタイトルは、ここにある「しあわせ」。
それぞれのアイデンティティーについて。ある日のオーディションで、うまく自分をアピールできなかったレイチェルは、「どこの誰がそんなに簡単に自己紹介できる?」「Who am I?」と歌い、カズヤは「人生の幸せしか描かない」と言ったルノアールに向けて、「今のすべてを描きたいんだ」と歌う。
部屋にまた1枚、カズヤの絵が増えた。「ただいま」の抱擁、重ねたキスと、60日の出来事を数えあげるが、ベッドをともにしたのは1日だけだった。レイチェルは、「大事な人とはすぐ寝るべきじゃない。‥‥終わりがあるから今が好き」と言う。
ビザの有効期限は90日。ふたりで暮らせる猶予期間はあと1カ月。地球が生まれた時から今に繋がる時間を歌で辿る。長い長い歴史の中で、彼と彼女の短い短い時間は、こうして過ぎていった。
最後の1週間。停電の夜、ロウソクの灯りの中で向かい合うふたり。「結婚したい」と打ち明けられないカズヤ。「女しか愛せない女だった」と告白できないレイチェル。カズヤの7枚目の絵が飾られる。レイチェルが自分を語りはじめ、彼女の現在をすぐには受け止められないカズヤ。カズヤが、1枚ずつキャンバスを裏返していく。裏側は白──。
1月24日、カズヤは日本へと飛び立ち、またひとりになった男と女。キャンバスが裏返され、Red、Orange 、Yellow、 Green、 Blue、 Indigo 、Violetの絵が浮かび上がる。
出会いからの思い出がフラッシュバックし、キャンバスが白に戻り、“The End”。
「Stop!」──「この話はここで終わらない」とレイチェル。1年後、カズヤがNYにやって来て、彼女に結婚を申し込む。「息づくふたりの色を混ぜ合わせて、新しい色をつくろう! Color of Life」とふたりが歌う。
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