Data
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[初演年]2007年
[上演時間]1時間30分
[幕・場面数]一幕十場
[キャスト数]12人(男6・女6)
撮影:石川純
鄭義信
ドールズタウン
鄭義信Chong Wishing
1957年、兵庫県姫路市生まれ。作家、演出家。同志社大学文学部を中退し、横浜放送映画専門学校(現・日本映画学校)美術科に学ぶ。松竹の美術助手から劇団黒テントに入団。
同世代の仲間と作った劇団新宿梁山泊を経て、現在はフリーとして活躍。文学座、オペラシアターこんにゃく座、新国立劇場ほかに戯曲を提供する傍ら、92年に立ち上げて自ら作・演出を務めるプロデュース集団「海のサーカス」で、人生の機微を描いた哀しくもコミカルな作品を発表。93年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。並行して映画にも活動の場を広げ、同年『月はどっちに出ている』の脚本で毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には『愛を乞う人』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第1回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など多くの賞を受賞した。平成13年度芸術祭賞大賞他を受賞した『僕はあした十八になる』(2001年 NHK)などテレビ、ラジオのシナリオでも活躍中。08年、新国立劇場制作の日韓合同作品『焼肉ドラゴン』(11年、16年再演)は韓国ソウルでも上演。同作品で第16回読売演劇大賞優秀演出家賞、第12回鶴屋南北戯曲賞、第43回紀伊國屋演劇賞、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2014年春、紫綬褒章受章。
https://www.lespros.co.jp/artists/wishing-chong/
「おかめ」と「ひょっとこ」という二人の人形遣いがいる。旅芸人で、行く先々で芸をしては糊口をしのいでいるが、現在無一文。早く次の町へ行かないと飢え死にしてしまう。ひょっとこは焦っているが、おかめは少し知恵が遅れているせいか、呑気なもの。二人は疲れて鉄橋にもたれ、持っている「幸太」人形を取り出してみる。
そのむかし。終戦の年。関西。
川沿いに小さな街がある。貧しい人達の貧しい家々。鉄橋から見下ろすと、それらはまるで吹けば飛ぶ人形の集落のようだ。
少年・幸太はそこで暮らしていた。父は戦死し、家には母ふさよと、間借り人の河島さんがいる。河島さんは革なめしを仕事にしている部落出身者。足が悪く、口数は少ないが、幸太には優しい。自転車を貸してくれたりもする。しかし、母が河島さんになんとなく気があるところが、幸太は気に食わない。
戦争が終わったら、ここから自由に出かけられるのに……と夢見つつ、仲良しのハーフの真理子、近くに住むうめとみつるの姉弟らと遊ぶ日々。噂話や自慢話、嘘や喧嘩をつきまぜた、現実とも幻想ともつかない話を作っては、みんなで冒険するのが好きだった。
しかし戦争は日増しに激しくなっていく。母や河島さんは訓練に駆り出され、大好きなハーフの真理子は、彼女の身を案じる祖父から蔵に閉じ込められてしまう。うめもみつるも、行きたくはないが田舎に疎開が決まった。
そして激しい空襲。夜中までふさよの革草履を作っていた河島さんは、焼夷弾にやられてしまう。街の人たちも死んだり、焼け出されたりして、川は死体で溢れかえる。
幸太とふさよはなんとか鉄橋まで逃げてきた。しかし周りは炎ばかり。ふさよは河島の作った革草履を幸太に渡す。そして下流に中州があるからそこまで泳げ、と息子を川に投げ落とした。自分は泳げないから一人で行け。ふさよは炎に揉まれつつも、笑いながら手を振りつづけた。
生き残った幸太は、真理子が蔵から出られなくて死んだことを知る。好きだった人たちがみんないなくなってしまったことも。そして、喜びも悲しみも、すべて抱えて生きていかなければいけないことを知る。
時代が変わり、人形遣いのひょっとことなった幸太は、つれあいのおかめとなんとかかんとか生きている。母の笑顔、大好きだった真理子の笑顔を胸に、見知らぬ人に幸福を、笑顔を分けてあげるために。
Profile
結城座
日本の江戸時代1635年に初代結城孫三郎が旗揚げ。その後373年(2007年現在)の長い年月を経て、現在 『国記録選択無形民俗文化財』 『東京都の無形文化財』に指定される、日本唯一の伝統的江戸糸操り人形の劇団。江戸幕府公認の五座(歌舞伎三座の市村座・中村座・河原崎座、薩摩座、結城座)の中で、現在もその活動が存続しているのは結城座のみとなっている。座長は、現在の十二代目結城孫三郎。
結城座の主な活動として、伝統的な演目による古典公演の他に、現代作家による書き下ろしや翻訳による新作公演を手がけ、役者と人形が同じ劇空間で競演したり、人形遣いが人形を使う一方で生身で役を演じたり、また新作の劇中に古典の手法や、江戸時代から伝わる「写し絵」(ガラスの板に絵を描き投射する)などを挿入するなど、常に結城座独自の新しい舞台空間を創造し続けている。
ヨーロッパ、中近東、東南アジア、旧ソ連、アメリカなど数々の海外公演でも成功を収め、1986年ベオグラード国際演劇祭で上演した人形劇「マクべス」で、『特別賞・自治体賞』を受賞。2007年7月には、ジャン・ジュネ作、フレデリック・フィスバック脚本・演出で、2002年に初演されたフランスとの海外共同制作『屏風』が、アヴィニヨン演劇祭のメインイベントとして再演される。
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