[初演年]2007年
[上演時間]1時間30分
[幕・場面数]1幕1場
[キャスト数]8人(男5・女3)
別れの唄
1962年東京生まれ。劇作家、演出家、青年団主宰。こまばアゴラ劇場芸術総監督、城崎国際アートセンター芸術監督。大阪COデザインセンター特任教授、東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐、京都文教大学客員教授、(公財)舞台芸術財団演劇人会議理事長、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみマネージャー、日本演劇学会理事、一般財団法人地域創造理事、豊岡市文化政策担当参与、奈義町教育・文化の町づくり監。
16歳で高校を休学し、1年半かけて自転車による世界一周旅行を敢行。世界26カ国を走破。1986年に国際基督教大学教養学部卒業。在学中に劇団「青年団」を結成。大学3年時、奨学金により韓国延世大学に1年間留学。
「現代口語演劇」を提唱し、1990年代以降の日本の現代演劇界に多大な影響を与える。海外公演に意欲的に取り組み、フランス、韓国、中国との国際共同制作も多数。2008〜2013年にBeSeTo演劇祭日本委員会委員長。また、民間小劇場のこまばアゴラ劇場の経営者として若手演劇人を育成。演劇によるコミュニケーション教育、大学における演劇教育など演劇教育分野でも目覚ましい成果を上げる。公立劇場芸術監督を務め、「芸術立国論」(2002年発行)を著すなど、国や自治体の文化芸術による公共政策をオピニオンリーダーとして牽引している。
受賞歴:1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲受賞したのをはじめ、2019年『日本文学盛衰史』で第22回鶴屋南北戯曲賞受賞するなど作品の受賞歴多数。2006年モンブラン国際文化賞受賞。2011年フランス国文化省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。
青年団 公式サイト
http://www.seinendan.org/
場所は東京郊外、多摩丘陵のふもと。新興住宅地に古くからある一軒家の居間。月の美しい秋の夜に、37才の若さで病死したフランス人女性マリーの通夜が営まれている。マリーは日本でフランス語の講師をしており、夫武雄との間に3才の娘文子がいる。ひとしきり参列の客が去り、親族のみが残ったところから舞台ははじまる。マリーの親族が多いこともあり、会話は基本的にフランス語である。
喪主・武雄は明日の準備などで落ち着かないが、その他はすることもないのでなんとなくのむだ話がはじまる。葬儀のためにフランスからやってきたマリーの弟のミッシェルには日本の文化がいちいち不思議だ。どうして美しくもないビルが林立しているのか、猿が温泉に入るのか、教会でもない葬式のためだけの施設があるのはなぜか、それらの質問に武雄の妹由希子や日本に住むマリーの友人アンヌがフランス語と日本語を交えてなんとか答えている。
そこにジュリアン(マリーの父)とアイリス(マリーの母)、武雄も加わるが、武雄は同席しつつも同じ部屋で葬儀屋との打ち合わせもしている。葬儀の値段や火葬、お墓、弔電、席決めなど日本人にとっては当たり前のことが、フランス人から見ると謎だらけ。打ち合わせを通訳してもらっていたいたジュリアンたちからいちいち質問が飛ぶ。
そこにマリーの元夫、フランソワが予告もなくフランスからやってきた。フランソワは由希子の案内でマリーの祭壇のある部屋へ。フランソワが嫌いなミッシェルはタバコを吸いに外に出て行ってしまう。
フランソワがマリーの遺体にキスしようとし、止めに入った葬儀屋を殴ったためにひと騒動もちあがる。「葬式にトラブルはつきもの」と平然としている葬儀屋と謝るフランソワ、仲裁している由希子も加わり、居間では日本人の宗教観、結婚観などついての四方山話がはじまる。
フランソワと葬儀屋がひきとった後の居間。
ジュリアンとアイリスは妻が死んだというのに泣かない武雄に、なんとなく複雑な感情を抱いている。武雄はそんな雰囲気を察するでもなく、探し物をはじめた。しばらくすると、小説を一冊持って戻ってくる。有島武郎「小さきものへ」。母を失った子供達への、励ましの言葉が綴られている。その一節を紹介する武雄。彼は今、なんとなく、その文章の気持ちが分かるのだと言う。
タバコを吸いに行っていたミッシェルが居間に戻り、今夜は月が綺麗だという。日本語とフランス語が飛び交い、月についての四方山話が続く中、マリーへの複雑な感情を抱いていた由希子が義姉にも月を見せたいと中座するところで幕。
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