[一幕]
とある戦争からX年後。新興ヤクザの「キャピレット」と、三国人が元締めの「モンタギュー」という二つの愚連隊が縄張り争いを繰り広げる「ヴェローナ」。
深夜、街外れの埠頭に兄ティボルトに誘われて田舎から出てきたジュリエットが到着。迎えに来た兄の内縁の妻ソフィアに、男運の悪さを嘆き、人生をやり直したいと告げる。
戦争で片足を失ったティボルトは、キャピレットの若頭ロベルトに心酔し、喧嘩三昧。ソフィアは、別人のようになった夫を心配している。
高架下にある「白頭山(ペクトゥサン)東洋治療所」前で、元モンタギューのメンバーで今は更生した吃音のロミオがカストリ屋台を開いている。希望のない日々を暮らす彼には、マキューシオとベンヴォーリオという幼馴染がいる。理知的なベンヴォーリオと真面目なロミオは、喧嘩っ早いマキューシオの尻ぬぐいをしている。
治療所のローレンスから、ロクでもない連中とは手を切るよう忠告されているロミオだが、二人に誘われてダンスホールに出かけ、偶然、ジュリエットと出会う。
「この街で希望を見つけるのは、砂浜で失くした指輪を見つけるより難しい」と言うロミオに、「あんたも見つけられる」と励ますジュリエット。二人は一瞬で恋に落ち、物干し台で愛を誓う。
生き急ぐように無茶をするティボルトに、ソフィアは自暴自棄になる理由を尋ねる。ティボルトはかつて戦場で、軍の「戦闘にたえざる者は適宜処置すべき」という命令で、味方の傷病兵や三国人の少年を殺した地獄のような記憶を語る。
モンターギュとキャピレットがにらみ合う中、マキューシオとティボルトのタイマン勝負が始まる。ロミオが仲裁するが、マキューシオはティボルトに刺される。戦時中の記憶がフラッシュバックし、悲痛な声を上げるティボルト。カッとなったロミオが切りかかると、ティボルトはロミオの手を掴み、自分の胸に突き立て、笑顔の中で絶命する。
パトカーのサイレン音、散り散りに逃げ出す人々、立ちすくみ泣きじゃくるロミオをベンヴォーリオが抱きしめる。
[幕間]
遺影を抱き、狂ったように歌い踊る戦争未亡人たちが通り過ぎる。取り残された喪服のソフィアは、嘆きの声をあげる。
[二幕]
ジュリエットは、兄の敵と知りつつロミオと物干し台で初夜を過ごす。警察に追われるロミオは、ローレンスの手引きで町から逃れる算段をする。マキューシオを殺した男の妹とロミオが結ばれたことを知ったベンヴォーリオは、彼を責める。
一方、ロベルトは死んだティボルトの借金の肩代わりと騙り、ジュリエットをカフェーの女給として働かせようと画策。ローレンスは助けを求めてきたジュリエットに仮死状態になる薬を渡し、目覚めた時にロミオと逃げられるよう手配すると約束する。
ローレンスの使者となったベンヴォーリオは、ロミオにジュリエットの死を知らせ、後を追えるようにと、ローレンスから盗んでいた本物の毒薬を渡す。ジュリエットが本当は死んでいないことを伝えるローレンスの手紙を燃やしながら、ベンヴォーリオは、「生き抜いて、生き抜いて、この国がどない変わっていくのか、この目で、見続けるんや」と炎を見つめる。
ソフィアたちがジュリエットの葬儀を行なっていると、鎌や日本刀を手にしたロベルトとキャピレットが押し寄せる。その騒ぎを収めようとした警官の威嚇射撃をきっかけに、血で血を洗う義のない混乱へと突入する。
ジュリエットの死体に駆け寄り、毒を飲み干し倒れるロミオ。目を覚ましたジュリエットはロミオの死体に気付き、落ちていたナイフで自らの胸を刺し息絶える。
二人の死に気づいて騒ぎ出す群衆。「みんな、モンタギューの仕業や!」とデマで混乱を先導するロベルト。「殺せ!」「殺せ!」の怒号と殺し合いの中、遠くから戦争の足音が迫る。
その混乱を割り、純白な装いのロミオとジュリエットがティボルトとマキューシオを引き連れて歩む。降りかかる粉塵で黒く染められる花嫁と花婿が見つめ合う中、暗転。
戦争の足音はますます大きくなっていく……。