土田英生

その鉄塔に男たちはいるという

2006.06.06
土田英生

土田英生Hideo Tsuchida

1989年に「B級プラクティス」(現MONO)結成。1990年以降全作品の作・演出を担当する。張りつめた状況の中に身を置く普通の人々のたたずまいや認識のズレから生じる会話の可笑しさや哀しさを軽快なテンポで見せることで評価を得ている。1999年には『その鉄塔に男たちはいるという』で第6回OMS戯曲賞大賞を受賞。2001年、文学座に書きおろした『崩れた石垣、のぼる鮭たち』で第56回芸術祭賞優秀賞を受賞。2003年9月より文化庁の新進芸術家留学制度で1年間ロンドンに留学。現在はフジテレビ『東京タワー』など、テレビドラマの脚本も手がけている。

https://www.c-mono.com/

その鉄塔に男たちはいるという 土田英生

『その鉄塔に男たちはいるという』
(1998年/伊丹アイホール) 撮影:松本謙一郎

Data :
[初演年]1998年
[上演時間]90分
[幕・場面数]5幕
[キャスト数]男5人

 駐屯地を抜け出したコントグループと追ってきた脱走兵は、森林の中の鉄塔に篭っていたが、戦闘終了後、味方から銃が向けられる前でショウを始める。

 一週間隠れていれば日本に帰れると踏んで、座長を残して慰問中の駐屯地を逃げ出した「コミックメン」の4人は、些細なことで揉めている。眠れない吉村に起こされて一緒に盛り上がった木暮と笹倉は、上岡に注意される。Tシャツを巡って言い争っていた木暮と笹倉は、今後に備えて地図を作ろうとしていた上岡に怒られる。日本に帰ってライブをやることしか頭にない吉村がショウのオープニングをやり始めると、皆、駐屯地でやらされた慰問向けのネタや、いつもと違う反応を思い出す。

 この鉄塔にいると噂を聞いてやってきた脱走兵の城之内は、一週間後に大規模なゲリラ一掃作戦があり、ここにいたほうがいいという。見張りや水汲みのルールを決めてやりたがる上岡と、好きにしたい笹岡は対立し、上岡は水を汲みに行く。銃声が聞こえ、緊張が走る。木暮はルールを守った方がいいと、上岡の様子を見に行く。城之内は、些細な揉め事を見ても、正義感から上官や仲間を非難した男が殺された事件を思い出すと吉村にいう。

 城之内は4人を仲裁しようとするが、うまくいかない。戦闘の加担になるようなネタは嫌だと出てきた上岡が、吉村は何も考えていないと非難すると、城之内が、四人の脱走後駐屯地は殺伐とし、座長たちはひどい処分をされるらしい、と言い出し、みな静まる。笹倉が自分たちはキリギリスなんだから冬でも歌ってればいい、というと、城之内も皆を和ませようと、覚えたてのオープニングや吉村の持ちネタをみせる。5人でショウをやろうと盛り上がる。

 戦闘終了後、帰る部隊の様子を見ていると、突然、銃口を向けられる。鉄塔を降りて犠牲になると城之内は言い出すが、座長たちの様子が見え、自分たちも殺されるのだと四人もわかる。このままじっとしているのか、と城之内に聞かれ、全員が立ち上がり、銃口を向けられる前でショウを始める。突然明かりが消える。

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