『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』
(2003年) 撮影:宮内勝
Data
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[初演年]1991年
[上演時間]2時間
[幕・場面数]9場
[キャスト数]10人(男6・女4)
横内謙介
愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸
横内謙介Kensuke Yokouchi
1961年、東京都生まれ。神奈川県立厚木高校在学中に高校演劇をはじめ、処女作『山椒魚だぞ!』で演劇コンクール優秀賞を受賞。早稲田大学在学中の1982年に劇団「善人会議」を旗揚げし、物語性に富む、個性的なキャラクターの登場する作品を発表する。93年、あえて劇団制にこだわり、再スタートを切る意味で、劇団名を「扉座」に改名。「観やすい、楽しい、分かりやすい」作風で、職業劇作家として幅広く活躍し、市川猿之助率いるスーパー歌舞伎や商業演劇にも作品を提供している。テレビのパーソナリティやワークショップの指導者としても活躍。『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』で岸田國士戯曲賞受賞。スーパー歌舞伎『新・三国志』で大谷竹次郎賞を史上最年少で受賞。
この王様は実はかつてペテン師に騙されて愚者しか見えない服を買い、裸で町を行進して笑い者になった「裸の王様」なのである。今は心を病んでいるのだ。
王様の目前へ、一人の田舎者がフラフラと出現する。この人物は、セルバンテスの「ドン・キホーテ」のなかの従者、すなわち、サンチョ・パンサである。彼が加わると、ここから舞台は、「ドン・キホーテ」の一場面(宿屋)を中心に進行することになる。
宿屋には旅芸人が居候をしていて、彼は多額の借金を抱えんでいる。その娘は心がすさみきっていて、「目に見えるもの」以外信じようとしない。「王様」はこの旅芸人がパントマイムで現出させた「真実の剣」を彼女につきつけるが、通用せず、逆に少女に罵倒される。
この後、今まで宿屋であったはずの場所に、現代の服装をした女性、中川恭子が突然現れ、また、これまで登場した人物たちが、次々に扮装をといて現実の人間に戻る、という光景が「王様」の前に展開する。彼女たちは、「王様」、すなわちかつて中学校教師だった男の教え子たちであったのだ。男は、生徒たちとのトラブルかもとで、教え子の恭子の顔に傷をおわせていた。「王様」は、この傷害事件がきっかけで、精神の病になったのだった。目の前の生徒たちは当時の非を詫び、恩師を「悪夢」から救うためにやってきたのだと言う。しかし、それは、彼らの悪意のこもった再度の悪戯であった。「王様」は見えない服を着せられて、裸の体を抱いたまま寒さに震えるのだった。
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