*1 関口存男(1894〜1958)
ドイツ語学者。日本におけるドイツ語教授法を大きく発展させ、大学や外国語学校で講師を務めたほか、NHKラジオ・ドイツ語講座の担当でも知られた。ドイツ語の他に、英語、フランス語、ラテン語、ギリシア語など様々な言語に通じる語学の天才。また1910年代以降、新劇運動に関わり、翻訳、俳優、演出などを担う演劇人としての一面もあった。
*2 ハンス=ティース・レーマン
ドイツの演劇研究者。1944年生まれ。1981〜87年ギーセン大学、1988〜2010年フランクフルト・ゲーテ大学で教鞭を取る。1999年『ポストドラマ演劇』を著し、1960年代以降の演劇の新しい展開を理論的に考察、世界の舞台芸術に大きな影響をもたらした。
*3 ルネ・ポレシュ
ドイツの劇作家・演出家。1962年生まれ。ギーセン大学応用演劇学科で学び、90年代よりポストドラマ演劇の牽引者の一人として、ドイツ語圏の各地の劇場で作品を制作。2001年ミュールハイム劇作家賞受賞。2001〜07年ベルリン・フォルクスビューネ付属の小スペース「プラーター」芸術監督を務めた。2002年『プラーター三部作』で「テアターホイテ」誌最優秀劇作家に選ばれる。来日公演としては、フェスティバル/トーキョーでの『無防備映画都市─ルール地方三部作・第二部』(2011)および日本人俳優で自作を上演した tpt『皆に伝えよ!ソイレント・グリーンは人肉だと』(2006)がある。
*4 リミニ・プロトコル
シュテファン・ケーギ、ヘルガルド・ハウグ、ダニエル・ヴェッツェルの3人が2000年にフランクフルトで結成したユニット。特定の主題のもとで特別な知識や経験、属性をもつ一般人を舞台に上げ、現実と接続した問いを提示するドキュメンタリー演劇や、様々なメディアを用いて公共空間で展開するプロジェクトを行い、世界的に注目を集める。日本では、これまでに『ムネモパーク』(2008)、『カール・マルクス:資本論、第一巻』(2009)、『Cargo Tokyo-Yokohama』(2009)、『100% Tokyo』(2013)が上演されている。
*5 『一方通行路〜サルタヒコへの旅〜』(2006)
巣鴨地蔵通り商店街を舞台に、Port Bが制作した最初のツアー・パフォーマンス。観客は一人ひとり、商店街を約500回録音した音源から作られた音声ファイルを聞きながら歩く。商店街の中のいくつかのポイントで与えられる指示に従って進むうちに、見ると同時に見られる、街の中での視線や知覚の交錯を体験する。
*6:『東京/オリンピック』(2007)
東京の定期観光バス「はとバス」と協働し、1964年に開催された東京オリンピックに関連する訪問地をバスで巡りながら、様々な意味で「競争」を続ける都市・東京、そこに生きる"私たち"を問うたツアー・パフォーマンス。
*7 『サンシャイン62』(2008)
旧巣鴨プリズン跡地に建てられた池袋のランドマーク、サンシャイン60が見えるチェックポイントを巡る過程を通して、戦後日本の歩みとその記憶を問うツアー・パフォーマンス。観客は5人1組のチームで移動しながら、与えられた役割や指示書の指示に従って、様々なタスクの実行、あるテーマに関する議論などを行う。
*8 『完全避難マニュアル 東京版』
「東京の時間からの避難」をテーマに、大都市東京と個人との新たな関係を仮構するプロジェクト。山手線全29駅の周辺に「避難所」を設置。観客は、まず『完全避難マニュアル』のウェブサイトにアクセスし、そこで指定された駅から、宗教施設、シェアハウス、ホームレスの集落などの「避難所」を訪れ、東京の様々なコミュニティの人々と出逢い、時を過ごす。
*9 『個室都市東京』
フェスティバル/トーキョー09秋に初演された作品。池袋西口公園に24時間営業の個室ビデオ店を設置。1960年代に寺山修司が脚本を担当したテレビ・ドキュメンタリーをモデルに、公園に集う通行人や外国人、ホームレスなど様々な人々に同じ質問を投げかけたインタビュー映像がDVDに収められ、観客は陳列されたDVDを選んで鑑賞する。加えて「避難訓練」と題されたツアー・パフォーマンスでは、個室ビデオ店から雑居ビル内に設置された「出会いカフェ」に移動。観客は指名した相手と10分間対面し、相手から映像と同様の質問を受ける。
2010年に『個室都市 京都』(KYOTO EXPERIMENT)、2011年に『個室都市 ウィーン』(ウィーン芸術週間)も制作された。
*10 『完全避難マニュアル フランクフルト版』
2014年9月、ムーゾントゥルムのシーズン開幕プログラムとしてPort Bが行ったプロジェクト。15団体のアーティストとの協働で、フランクフルトおよび隣接地域に40ヵ所の「避難所」を設け、観客はウェブサイトから地図をダウンロードしたあと、電車等の公共交通機関を使ってそこを訪れる。批評サイトNachtkritikの「2014年ドイツ語圏最重要作品」にノミネートされ、一般投票の結果8位に選ばれた。
*11 『Referendum 国民投票プロジェクト』
東日本大震災と福島第一原発事故を受け、「”わたしたち”の声」とは何か、という問いへの応答を試みたプロジェクト。東京と福島の中学生へのインタビュー映像を改造した保冷車にアーカイブし、観客はそれを鑑賞するとともに、同じ設問のアンケートに回答し投票する。フェスティバル/トーキョー11での初演では、保冷車が東京、横浜、福島を巡回しながら、各地で学者、芸術家、詩人などとのトークイベントも開催された。2012年には東北、2014年には広島・長崎・埼玉を訪れ、中学生へのインタビューが加えられたほか、映像インスタレーションとして水戸、ウィーン、ベルリンでも展示が行われた。
*12 『東京ヘテロトピア』
「東京の中の異郷」にフォーカスを当て、宗教施設、モニュメント、難民収容施設跡地、エスニックレストランなど、東京とアジアの歴史や現在に関わる訪問地を、参加者が周遊するプロジェクト。各訪問地では、詩人と小説家が当地に着想を得て書いた物語をラジオで聞くことができる。フェスティバル/トーキョー13で上演された後、2015年に『東京ヘテロトピア』iPhone版アプリケーション発表、2020年まで訪問地が追加される。
『東京ヘテロトピア』をもとに、2016年には台北で現地でのリサーチに基いて『北投ヘテロトピア』を実施、現在はアテネでもプロジェクトが進行(2017年5月開幕予定)している。
*13 『横浜コミューン』
横浜のアジア・コミュニティへのリサーチに基づき、インドシナ難民が話す日本語と日本を主題にした映像作品を制作。更に、日雇い労働者用の簡易宿泊所が多く並ぶ横浜・寿町の住人とインドシナ難民が「先生」と「生徒」となり、『華氏451』(レイ・ブラッドベリ)の日本語訳を「教科書」として、即興的に日本語教室を上演するライブ・インスタレーションを行った、「日本/語」を問い直す作品。横浜トリエンナーレ2014参加。
*14 『秋田国語伝習所』
方言と標準語のはざまに生まれる「言葉の教育」の歴史と現在にフォーカスを当て、学校との連携、テレビ、ラジオとの協働により行われたプロジェクト。「国語伝習所」は19世紀末、日本の植民地となった台湾に設置された日本語教育施設。
*15 『大分メディアコレジオ』
16世紀、日本で初めてコレジオ(キリスト教大神学校)が大分に設置され、西洋の文化や学術が紹介された場所であるという大分の歴史に着目し、大分合同新聞やテレビ、ラジオ、ウェブサイトなどの複数のローカルメディアとの協働によって行われたプロジェクト。
*16
次の15科目の"講義"が制作された。
会計学/建築/生物/料理/英語/国際関係/ジャーナリズム/文学/メディア研究/音楽/哲学/リスク・マネジメント/研究/スポーツ科学/都市研究
*17 小林恵吾
建築家。早稲田大学准教授。早稲田大学、ハーバード大学大学院を卒業後、2005年〜12年レム・コールハース率いるOMA/AMOのロッテルダム事務所に所属し、主要プロジェクトに参加。中近東や北アフリカの大規模建築や都市計画プロジェクトを手掛けた。2014年、第14回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の展示デザインを担当。