Artist Interview アーティストインタビュー

撮影:大原狩行
Yukio Ninagawa’s new theatrical venture
Confronting the realities the common people' history together with the elderly and young people
play
高齢者と若者と共に民衆史のリアルに立ち向かう
蜷川幸雄の新たな船出
今日本で最も多忙を極める演出家の蜷川幸雄。今年から来年のプロジェクトだけを見ても、民間劇場のBunkamuraシアターコクーンと公共劇場の彩の国さいたま芸術劇場で芸術監督を務め、次々と話題作にチャレンジ。3月は笑いと博識で民衆劇をつくり続ける劇作家・
井上ひさし
との仕事で新作『ムサシ』、5月は長年にわたってコンビを組んできた劇作家の
清水邦夫
作品の再演出で『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』、6月はシェイクスピアの歌舞伎版『NINAGAWA 十二夜』の再演とロンドン公演、9月はトム・ストッパードの9時間の大作『コースト・オブ・ユートピア』、11月は『12人の怒れる男』、来年1月は寺山修司が初めて書いた戯曲を初演出する『血は立ったまま眠っている』、来年3月はシェイクスピアの全作上演に取り組んでいる彩の国さいたま芸術劇場のシリーズ22作目『ヘンリー六世』(三部作を二部構成にした6時間の大作)と続く。
加えて、注目すべきが、2006年にさいたま芸術劇場の芸術監督に就任してから公立劇場の仕事として立ち上げた2つのプロジェクトだ。ひとつが55歳以上の無名の高齢者と共に「個人史をベースにした新しい演劇の形態を模索したい」とプロの舞台俳優の養成を目指して旗揚げした「さいたまゴールド・シアター」。そしてもうひとつが、次世代の若い俳優たちの養成を目的に立ち上げた「さいたまネクスト・シアター」だ。この10月、ネクスト・シアターは、学生たちの政治運動、新劇から小劇場演劇への演劇革新運動に日本が揺れた1960年代を代表する傑作、福田善之の『真田風雲録』で産声を上げた。全共闘世代の演劇人としてその時代を共に過ごした蜷川が、若い俳優と共に改めて時代を革新した演劇の再評価に挑み、自らの演劇哲学を伝えるネクスト・シアター。そして、高齢者と共に新たな演劇を目指すゴールド・シアター。2つのプロジェクトに掛ける思いを聞いた。
聞き手:扇田昭彦/2009年9月28日 さいたま芸術劇場にて