Artist Interview アーティストインタビュー

知的障害者との舞台づくり
30年におよぶ活動の軌跡を内藤裕敬に聞く
play
Hironori Naito talks about 30 years of theater projects with the mentally challenged
2006年11月19日日曜日、滋賀県の栗東芸術文化会館さきら大ホールで「糸賀一雄記念賞舞台芸術祭」として『ロビンフッド・楽園の冒険』と題した公演が行われた。その舞台には約230人もの障害者たち(知的障害等)が、中には介助のスタッフ付きで立っていた。これは、79年から滋賀県にある知的障害者施設の「あざみ・もみじ寮」で5年に一度行われてきた寮生による「舞台発表」の活動が県全体に広がって実現したものだ。滋賀県内各地で8チームに分かれて約5年間にわたって実施されたパーカッション、合唱・リズム、ダンス、演劇表現等の活動の成果をもちより、今回はじめてひとつの舞台作品として発表した。
劇場は大きく様相を変え、客席は前3分の1が取り払われて広い車いすスペースになり、ステージの前面に出入りするための特設スロープを設置。演出家はその車いすスペースの最前列、ど真ん中に陣取り、上演中ずっとステージに向って指揮を取り続ける。出演者は基本的に全員が客席と相対するようにステージ上にスタンバイしたままで、お客さんと一緒にお芝居を見ながら、自分の番がくれば出演し、時にはスタンバイした状態で参加する。
探し物が何かも忘れてしまったペンギン達がいろいろな生き物と出会い、冒険の旅をするという物語をかりて、障害者も健常者もともに笑い、ゲームに興じ、生きている喜びをわかちあった舞台だった。全員が舞台に乗って稽古したのは公演前日の公開ゲネプロがはじめてであるにも関わらず、これだけエネルギーに溢れた舞台ができあがった背景とは? 演出の内藤裕敬に聞いた。
聞き手:神山典士