岸田國士

岸田國士

岸田國士 Kunio Kishida

1890〜1954。劇作家、演出家、批評家、小説家。東京四谷に陸軍士官の長男として生まれる。幼年学校から陸軍士官学校に進み、少尉に任官、久留米に将校として配属されるが、文学への思いやみがたく、父の反対を押し切って退官、東京帝国大学文科大学に入学する。1920年には、パリへ留学し、イプセン、チェーホフ、ストリンドベリーなどヨーロッパの近代劇に出合い、演出家ジャック・コポーが主宰する小劇場ビュウ・コロンビエ座に師事して、当時フランスで盛んであった演劇純粋化運動に接する。帰国後、「演劇新潮」に戯曲『古い玩具』と『チロルの秋』を発表して注目を浴びる。左翼演劇に反対して、戯曲の文学性を説く一方、1937年には久保田万太郎、獅子文六らと文学座を創立した。台詞は美しい「言葉」でなければならぬと主張し、そのためには劇作家が、音楽を聴くように「言葉」を聴かせるような作品を書かなければならないと考えた。