KAAT×地点 共同制作第7弾『忘れる日本人』
(2017年4月13日~23日/KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ)
Data
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[初演年]2017年
松原俊太郎
忘れる日本人
松原俊太郎Shuntaro Matsubara
1988年生まれ。小説家、劇作家。神戸大学経済学部卒。ベケットとジョイスに出会い、小説を書き始める。地点『ファッツァー』で演劇と出会い、2015年に処女戯曲『みちゆき』を発表。同作で第15回AAF戯曲賞大賞受賞。登場人物の声が交錯し、強い言葉をたたみかける長大なテキスト、物語として収斂させない独特のスタイルで注目を集める。2017年に地点とKAATの共同制作により『忘れる日本人』(構成台本・地点)を発表。「忘却」をテーマに、震災以降の日本社会と死者に寄り添う日本人の心性を痛烈な批評性をもって描き出し、高く評価される。2018年に地点とKAATの共同制作により発表した『山山』で第63回岸田戯曲賞を受賞。
舞台中央は粗末な紅白紐の結界によって四角く区切られ、その真ん中に木造の船が置かれている。
上演台本の登場人物は7名で、「ミチコ」を除いてすべて出演した俳優の略称。船乗りらしき男、巫女らしき女、平社員らしき男、女子高生ミチコ、パイロットらしき男、ミチコの父親らしき男、ミチコの母親らしき女という様々な日本人が次々に登場。「どこ?」「だれ?」「なぜ?」という疑問を語尾に付け、「わっしょい」という奇妙な合いの手を入れて会話し、行く先も知れぬ航海をはじめる。
際だったストーリーはなく、登場人物はそれぞれの不安や苛立ちや憤りを口にし、断片的なイメージが積み重なっていく。
三浦演出では、現実に対峙することを避ける「忘れる」日本人を表象するかのように、登場人物は基本的にすり足のような横歩きで、手であちこち指を指しながらゆらゆらと動きまわる。
また、同調性を表象するかのように、話し手が指さした方向と同じ方向を聞き手が向いたときに、「わっしょい」という合いの手を入れる。「わっしょい、わっしょい」のかけ声を挟みながら、まるで御神輿をかついでいるかのように会話が進展する。
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