塚原悠也

訓練されていない素人のための振付コンセプト001/重さと動きについての習作

2015.04.27
塚原悠也

塚原悠也Yuya Tsukahara

ダンサー/contact Gonzo主宰
1979年京都生まれ。2006年垣尾優と共に「contact Gonzo」を大阪にて結成。公園や街中で、「痛みの哲学、接触の技法」を謳う、即興的な身体の接触を開始。互いの行為を写真に収める「the first man narrative」という方法を開発し、大量の写真撮影も行い、映像は動画サイト「YouTube」で即時配信される。2007年大阪パフォーマンミング・アーツ・メッセ「720@PAMO AWARD」大賞受賞。同年大阪府立現代美術センター主催の「吉原治良賞記念アートプロジェクト」をきっかけに、ヘルシンキ・南京・ソウル・沖縄の4都市を巡り、2008年『project MINIMA MORALIA』を発表。以後、舞台芸術と現代美術の2つのフィールドで注目され、「南京トリエンナーレ 2008」や「あいちトリエンナーレ2010」などの国際的な美術展や芸術祭等に参加。現在contact Gonzoは、金井悠、加藤至、三ヶ尻敬悟を加えた4人のメンバーで、国内外の様々な空間におけるパフォーマンス、インスタレーション、マガジンの発行などその活動は多岐にわたる。関西学院大学文学研究科美学専攻修了。大阪在住。
https://www.youtube.com/user/contactGonzo

殴り合いともダンスともつかない即興的なパフォーマンスで知られるcontact Gonzoを率いる塚原悠也が素人でもパフォーマンスできるように書い振付の仕様書(ト書き台本)。「トヨタコレオグラフィアワード2014」ファイナルステージで初演。身体に重さの負荷をかけることにより、生きていることのしがらみや責任、たまの喜びなどを4人の登場人物の動きだけで伝えるパフォーマンス(無言劇)。
塚原悠也『訓練されていない素人のための振付コンセプト001/重さと動きについての習作』

トヨタ コレオグラフィーアワード 2014 最終審査会
塚原悠也『訓練されていない素人のための振付けのコンセプト001/重さと動きについての習作』

(2014年8月3日/世田谷パブリックシアター) Photo: bozzo
写真提供: TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD

上演場所に関して
暗転ができる場所であれば作品を上演する場所は問わない。
ただし最小限3000mm四方ほどの場所が必要。
作品は正面性を持つ。横、裏からは見せない。

パフォーマーについて
出演者は4名(以下、A、B、C、Dに分類)。年齢、性別は問わない。基本的には表現としてではなく、これを作業として行える人物が最適である(ダンスや演技の訓練を受けているとそれが邪魔になる場合があるので注意)。で きるだけ訓練を受けていない素人の出演者。また、明るい人間よりも、つつましいSPP(サイレント・パーレー・ピーポー)を優先的に選ぶ。た だし上演する以前にこの4名は知り合いである必要がある。共に登山をしたりしている必要がある(このときついでに作品で使用する石を持ち帰 る)。もとから田舎に住んでいる場合は、共に都会にでて公園やビルの隙 間で寝たりしている事。

パフォーマーの個別の準備
Aに関しての準備
衣装:細身のズボン(黒系色)、長袖スウェット(カーキ系色)、 ニットキャップ(黒)、スケートシューズ(黒)
持ち物:ボルトナット一掴み、割り箸×1、アラーム付き腕時計
Bに関しての準備
衣装:細身のズボン(黒)、長袖シャツ、細身のセーター、カーデ ィガン、靴底の凸凹が少なめの靴
持ち物:様々な分野の書籍をザックにいっぱい(必ず読んだ事のある書籍であること)、BMXの後輪(見つからない場合、何か回転するもので代用)、ロープ、飲み物
Cに関しての準備
衣装:赤い服、サッカーパンツ、スニーカー、くるぶしソックス、 キャップをかぶるかを現場で判断
持ち物:石(10-12kg)
Dに関しての準備
衣装:白地のティシャツに自分で絵を描くこと
持ち物:楽器(何かしらの、得意でないもの)、フラッシュ付きのカメラ
(Fujiの「写ルンです1600Hi Speed」が販売中はこれを使用のこと)

全体的な事前の準備に関して
リハーサルはできるだけしないように。
その時間と資金をすべて美味しい食べ物に充てる。
自分たちで行うテクニカルの不味さに関しては逆手に取る事を目指すこと。
健康保険に加入している事。

場所のセットアップに関して
Aが寝転ぶ場所を作品の中心とする。
(Aは場所の中心に寝転ぶ)Aは頭を下手(客席から見て左側)にむける。
ウェブカメラとパソコンを用意し、仰向けに寝るパフォーマーの顔を上から撮影し、テレビモニターに映す。
足下の方にドラム(タムなど。代用可。)をひとつ床に置く。
寝転んでいる背後に1200mm四方ほどの段ボールの家を置いておく。
これはDが現場であらかじめ作っておく。
照明や音響のセットアップはパフォーマーが行う。
客席も含め上演場所が15000mm 四方よりも小さい場合、音響装置は不必要。
それ以上の大きさの場合はマイク2台でAの声と、ドラムの音をアンプリファイする。
照明は基本的には白色地明かりで、パフォーマーはスイッチひとつで消せるようにしておく。
どこかの部屋でやる場合はそこにある照明を使う。

上演手順

Aが仰向けに寝転ぶ。
このとき15分に設定したアラームのカウントダウンを開始する。
続いてBがその上に乗る。

10分後、Cが大きな石を持ってさらに乗る。
Cはそれまでの間、石を持ったまま横にいても良い。
B、CはAに全体重を乗せて、また落ちないように努力する。

Dはその後ろにある段ボールの家に待機、暗転したら出てきて持参した楽器を演奏する。
また暗闇の中演奏しながらカメラのフラッシュをたきながら自身を撮影。
明かりが戻れば家にもどる。

暗転はAがボルトナットをドラムにあてたら、Bがそれを判断して照明を消す。
しばらくののちAの判断でクシャミをすることを合図にBが明転。

B、CはAにとって物理的に苦しい場所を選択して踏む必要がある、
しかし同時に肋骨や胸骨、鎖骨等を折らないようにも気をつける。
また骨のない腹部は直接内蔵を圧迫するので出来るだけ踏まないようにする。
持ち込んだ道具等を使って関わりを持つ。

Aのアラームが鳴ったら、そのままの体制で奥の家の中に移動する努力をする。
アラームを合図にDは家からでてきて楽器をならす。
しかるべきタイミングでDが光を消して終了。
アラーム以降は5分以内で終わらす。
すべてを真顔で無言で行う事。

(C)contact Gonzo


(この作品は物理学シリーズ第1作として発表されたもので、「訓練されていない素人のための振付コンセプト002/速度と動きについての習作」「訓練されていない素人のための振付コンセプト003/角度と動きについての習作」の続編が予定されている。)

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