ガレキの太鼓 第6回公演『吐くほどに眠る』
(2012年1月6日〜15日/こまばアゴラ劇場) 撮影:村田まゆ
Data
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[初演年]2010年
[上演時間]1時間35分
[幕・場数]1幕1場
[キャスト]8人(女8)
舘そらみ
吐くほどに眠る
舘そらみSorami Date
1984年、神奈川県出身。劇作家、演出家。大学演劇サークルでの活動、一年間の世界旅行を経て一般企業に勤務。一年半後に退社。2009年、平田オリザ率いる劇団・青年団の演出部に所属すると同時に自身の演劇ユニット・ガレキの太鼓を旗揚げする。舞台という非現実な空間で行動する「普通の人々」の生の感情、不安や孤独などが舞台空間を「社会」へと変貌させ、観客に「生きている実感」を呼び起こさせる芝居づくりを掲げている。主な作品に『止まらずの国』『ここに線を引く』『この部屋で私はアレをして』『いないいない』など。今作は青年団国際演劇交流プロジェクトの一環であり、気鋭のフランス人演出家ヤン・アングレと青年団演出部の若手演出家5人が参加する「日仏若手演出家シリーズ」の一本として上演された。
舞台上手寄りに一段高い台が置かれ、周囲には大量の衣服。出演者は場面や役が変わるたびにその衣服を脱ぎ着する。上手に“語り部のナオ”が座る椅子。二階部分に留置場にあたる別室。“語り部”だけは固定の俳優で、他の役は7人の俳優が代わる代わる演じる。
語り部のナオは、ある事件の失われた記憶を取り戻すためカウンセリングを受けている。子ども時代の思い出の間に、カウンセラーへの言葉が挟まれる。
父と美しい母、3歳年上の優しい兄の3人家族。いつも楽しく遊んでくれた優しい兄は、その繊細さから中学3年のときに引きこもりに。失望したナオは、不意に兄から抱きしめられた瞬間突き飛ばしてしまう。直後に兄は自殺未遂を図り、それをきっかけに留学。また、その喪失感から母も一時的に家出するが、家族を支えようとナオは明るく振る舞う。
高校時代。ナオは親友えみたちとバンドを結成し、同級生の前田と初体験も済ませる。地方大学に進学することになった前田にナオは別れを告げる。遠く離れた相手を心配し続けることはできない、と。
7人が役をかわるがえわる演じるなか、えみも一人の女優が演じる。
同じ大学に進学したナオとえみ。ナオは人に必要とされたいという強迫観念が強くなっている。えみに新たな交友関係ができそうだと知り、街中で「捨てないで!」と叫ぶ。恋人は「別れたら死ぬ」が口癖のような男だが、満足している。アルバイト先の老人介護施設では、介護が天職だと思うようになっていく。そんなナオに違和感を感じる母。
施設入居者の孫ヒロと出会い、交際を始めるナオ。祝福されて結婚するが、兄の一件から続く孤独と死への恐怖が精神を蝕んでいた。
カウンセリングにより、やがて「事件」の記憶を取り戻すナオ。
シングルマザーになったえみの母親学級につきそった日、病院の屋上でナオは女性患者に話しかけられる。「こんないい天気だと(屋上から)飛びたくなる」と言う女に取り乱すナオ。自殺を止めるつもりがもみ合ううち、女を転落死させてしまったのだ。
「私が命を奪いました。あの人に死んでほしくなかったのに」。
留置場に戻り嗚咽するナオ。やがて息を整え立ち上がる。えみや兄と交わした会話が聞こえてくる。
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