ままごと『わが星』
(2009年10月8日〜12日/三鷹市芸術文化センター 星のホール) 撮影:青木司
Data
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[初演年]2009年
[上演時間]1時間20分
[幕・場面数]1幕28場
[キャスト数]8人(男4・女4)
柴幸男
わが星
柴幸男Yukio Shiba
1982年、愛知県出身。青年団演出部所属。日本大学芸術学部在学中の04年に『ドドミノ』で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。その後、青年団の劇団内ユニット「青年団リンク」として2009年10月に劇団「ままごと」を旗揚げ。何気ない日常の機微を丁寧にすくい取る言葉と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居『あゆみ』、一人芝居をループさせて大家族を演じる『反復かつ連続』など、新たな視点と手法を用いて人々の日常を描く。愛知県での公演やワークショップ、岐阜県可児市での戯曲講座、福島県いわき総合高校での演出など、地方でも精力的に活動している。『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞。
何もない舞台中央に白く大きな「円」が描かれている。「円」は主人公たちが暮らす星であり、その周囲は星を囲む宇宙となる。客席は「円」を囲むように配置され、観客は宇宙から地球を眺めるように舞台を見る。
暗闇の中、男女の会話が聞こえて来る。そこは、まだ時間も光もない「無」の状態。全員の声が「ビッグバン」を叫ぶと舞台に光と音が入る。ドラムが刻むリズム、心音、時報のカウント音、それらに合わせて俳優は円の周りを回りながら、ラップで宇宙と女児(ちー)=地球の誕生を告げる。
(以下、言葉遊びのようなラップと郡読、ごっこ遊びのような芝居で自在に役を入れ替えながら表現)
ちーは、祖母、父、母、姉の5人家族。ごく普通の団地暮らしと地球消滅の風景が、言葉遊びのようなラップによってダブルイメージで表現される。
場面は変わり、円を挟むように望遠鏡を覗く男の子と先生が登場。男の子は星図にない星を見つけて喜ぶが、それはすでに消滅した星の光が遅れて届いたものだと言う先生。男の子が望遠鏡の倍率を上げると、そこに見えたのはちーだった。
再び、ちーの家。ちーは望遠鏡で星を見ている。家族が揃った夕食の席で、ちーは1週間後の誕生日プレゼントに「もっとよく見える望遠鏡」が欲しいとねだる。「来週」が早く来るようにと、円の周りを回るちー。
それを見て、「あれが自転だ」と先生と男の子。
誕生日当日、プレゼントに望遠鏡をもらったちーは、もっと見える望遠鏡が欲しいとねだり、「来年」が早く来るようにと、再び回り始める。
「あれが公転だ」と先生と男の子。
望遠鏡欲しさにちーがぐるぐる回ったため、時が早く進み、祖母が死んでしまう。祖母を助けようと逆回転。ちーは慌てて自分が生まれる前の時間まで遡り…。
場面は変わり、ちーの一家が今住む団地に引越して来た日。母と隣に挨拶に行ったちーは、月(つき)という女の子と出会い、友達になる。
二人が遊ぶ姿を望遠鏡で見て、「星に衛星を見つけた」と先生と生徒。
公園でままごとをするちーと月。些細なきっかけで始まる喧嘩、タイムカプセルの想い出、卒業、進学、就職、結婚、出産、やがて月が老いて病の床に着くまで、早送りで描かれる二人の人生。迎えに来たちーの姉の呼び声で、ままごとは中断する。
「あの星をこの目で見たい」と言う男の子。あの情景も既に終わったことで、光速を超え、星の終わりに間に合うように辿り着かなければ見ることはできないと言う先生。星の終わりがどのようなものかを聞いてもあきらめきれない男の子に、先生は光速を超えて旅する方法を伝授する。
流星に乗り、引力を利用して加速するスイングバイ航法。それは、夏休み、旅先で下り坂を駆け下りる自転車に乗るような加速と解放感。
再び、ちーの家。二段ベットの上下で眠る姉妹。ちーは「お腹がムズムズして眠れない」と訴えるが姉は取り合わない。ぐずりながらも眠るちー。
目を覚ますと、それは地球最後の日だった。明日はもう来ない。
先生からのお別れの電話。光速を超えて地球に向かった男の子が間に合うかも知れないと告げるその声はもうちーには聞こえない。
地球最後の日、家族で見上げる夜空には満月が眩しいほどに輝いていた。
そこには、かつてままごと遊びで埋めたタイムカプセルと同じ形のミラーボールを持った月が立っていた。言えなかった言葉が詰まったタイムカプセル…。月はその言葉を誰へともなく読み上げる。
再び家族だけの時間。星が消える前のカウントダウンが始まる。次第に熱くなりすべてが燃えると聞かされたちーは、「手をつないでいい?」と訊く。
円を囲む家族。地球の消滅を歌うラップとダンスが始まる。やがて自転車に乗った男の子が現れ、最後にちーと二人だけになる。
円の中央に立つ二人。
男の子「100億年、ずっと見ていた」
ちー「眠るまで見ててくれる?」
ちーが頭上の蛍光灯のヒモを引くと、舞台上の音と光がすべて消える。
「おやすみなさい」
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