『フローズン・ビーチ』
(2002年)
Data
:
[初演年]1998年ナイロン100°C公演
[幕・場面数]3場
[キャスト数]女4人(双子の愛と萌は一人二役)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
フローズン・ビーチ
ケラリーノ・サンドロヴィッチKeralino Sandorovich
1963年生まれ。横浜放送映画専門学校(現・日本映画学校)を卒業後、バンド「有頂天」を結成し、ヴォーカリストを務める。インディーズ・バンドブームの中心的な存在として音楽活動を行う一方、劇団健康を旗揚げして、1985年から92年までナンセンス・コメディを中心とした作品を発表。93年に演劇ユニット「ナイロン100℃」を立ち上げ、ほぼ全公演の作・演出を担当している。公演を「セッション」と称し、レギュラーメンバーに加え、毎回、多彩な客演を招いた企画性豊かな舞台を展開。得意のナンセンス・コメディのほかに、シチュエーション・コメディ、ダンス・映像・コントなどをミックスしたライブ的作品、女優だけによる西部劇など、多様な作品を発表している。99年に『フローズン・ビーチ』で岸田國士戯曲賞受賞。2002年第1回朝日舞台芸術賞、2002年『室温〜夜の音楽〜』で第5回鶴屋南北戯曲賞および第9回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。
虫に刺されると失明するとからかわれ腹を立てた市子が、殺虫剤を顔にかけてくるので愛は逃げだす。たしなめる千津に、千津のために愛を殺すと市子はいう。頭痛がすると入ってきた心臓の悪い萌に千津は強い薬をあげる。千津と二人きりになると、愛は市子が自分と間違えて萌を殺すかと確認する。帰宅した咲恵を、失明の代償に父に結婚を迫ったと愛はなじる。バルコニーで愛ともめた市子は愛を突き落とすが、千津は助けようとしない。萌は人を払い、咲恵に男と共に写る写真と貢いだ証拠の通帳をつきつけると、激しい乱闘の後心臓発作で死ぬ。が、咲恵は自分が殺したと思い込む。愛の死体がないことに動揺した千津が萌の寝室にいくと、ベッドの上の死体を発見する。すると、萌に扮した愛は、殺されていた妹を父親にばれる前に隠すようにと指示する。咲恵の前では萌の幽霊のように振舞う愛だが、写真と通帳を見て驚き、愛だとばれてしまう。
8年後。千津は仲間を匿ってくれと頼むが、愛は父が破産後自殺したので家を追い出される直前。千津のお土産を食べた愛と咲恵は体がしびれ、通報しようとするが電話線が切られている。自分が人殺しだと思わせた復讐だという千津を、愛は刺し殺すが、解毒剤を手に入れられず戻ってくる。市子が解毒剤がなくても直るというと愛は動揺し、抑えようとした市子の指を切る。不思議な力を持った市子に手当され千津は生き返り、市子を病院に連れて行こうとするが指は元通りになる。
さらに8年後。ほとんど沈みきった島に戻ってきた四人。16年前にもいた虫が、現地の言葉で過去をぶら下げて生きている、無理して笑うなという。虫を撃ち殺す市子。萌に強い薬を上げたと千津は話すが、咲恵はもう全部沈むのだという。突然飛んだ虫を追いかけて市子は海に落ちる。市子の笑い声に、千津も咲恵も愛も海に飛び込む。
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