『屋根裏』
(2002年) photo by Taku Ohara
Data
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[初演年]2002年
[上演時間]約2時間[幕・場面数]23場
[キャスト数]16名(男11名・女5名)
坂手洋二
屋根裏
坂手洋二Yoji Sakate
1962年生まれ。1983年に燐光群を旗揚げ。以後ほとんどの作品の作・演出を担当する。99年にACCのグラントによりNYに留学。劇団外への執筆および演出、評論集・戯曲集も多数。日本劇作家協会会長を10年にわたって務める。日本演出者協会理事。国際演劇協会日本支部理事。演劇をひとつの「メディア」として捉え、「共同体」と「個人」の相克をテーマに、社会問題をジャーナリスティックな視点で掘り下げる。沖縄問題、自衛隊問題、宗教問題などを取り上げる一方、舞踏、音楽、映像といった他ジャンルとの交流シリーズや、現代能の形式を導入したシリーズ、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)にまつわる連作を発表。海外15カ国27都市で公演を実施し、海外のアーティストとの合作を行うなど、国際的にも活躍。岸田戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞、読売文学賞、紀伊国屋演劇賞、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞など受賞歴多数。
…ある大学の寮を訪ねてくる「兄」。彼は、室内に設置された「屋根裏」とよばれる簡易個室キットに入り込む。そこは彼の「弟」が5ヶ月の間ひきこもり、自殺した場所だ。弟の死を納得できない「兄」は、「屋根裏」の発明者を探して冒険の旅に出る。
…いじめが原因で不登校になった「少女」は、ベランダに置いた「屋根裏」にひきこもる。同級生の「少年」が密かな欲望と企みを抱いて会いにくるが、容赦なく追い返す。それでも少女は、少年がくれた「アンネの日記」を読み、「私は自由だ」と思う。
…ある住宅の庭の地下に埋もれた「屋根裏」の中に、一人の男の「死体」がある。何年もひきこもり、外界との接触はレンタルビデオとインターネットだけだった男。彼の眼前では、ビデオの世界―刑事ものと時代劇と戦争映画が、終わらぬ悪夢のように展開される。彼が助けを求めて呼び出したのは、「屋根裏」の壁の落書きの人物が現実の存在となった「屋根裏ハンター」。しかし、ハンターは「死体」を慰めることしかできない。
…かつて「弟」が住んだ「屋根裏」を手に入れた「若い女」は、自分を妊娠中と主張し、アレルギーを呼ぶ全ての物を避けようとしている。彼女の狂気を疑う夫は「屋根裏」を処分する。かつての自分の「屋根裏」に滞在するため、毎日デパートに通う彼女もまた、「屋根裏ハンター」を呼び出してしまう。
…「兄」は「屋根裏」の製作者を見つけ出すために、「ひきこもり」相手のカウンセラーを始めた。患者を相手に、常に優秀だった弟の思い出を語る「兄」。
…「死体」となった男の夢では、彼の母親が自殺する。もうすぐ、男が見残していた最後のビデオである「戦争映画」が始まるだろう。
…不登校の少女を、担任教師が訪ねる。自分もいじめにあっていると叫ぶ教師に、小さなプラネタリウムを見せる少女。
…「屋根裏」が次第に社会問題化する中、「兄」は「屋根裏ハンター」に導かれて異界に紛れ込み、ついに「屋根裏」の発明者である「松葉杖の男」に行き当たる。「松葉杖の男」もまた、事故で言葉を失った弟と二人で暮らす「兄」だった。寝たきりの弟が「屋根裏」に描く自画像こそ、「屋根裏ハンター」だったのだ。
…「松葉杖の男」の言葉に従い、その弟の自画像を大きく描く、「屋根裏ハンター」を呼びだす儀式を行う「兄」。やがて「兄」の前に、屋根裏ハンターの姿形をもった「弟」が現れる。かつて約束した場所、なつかしい屋根裏で、兄と弟は再びめぐり合う。
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