Presenter Interview プレゼンターインタビュー

The activities of the Five Arts Center, toward the creation of contemporary Malaysian theater
マレーシア
マレーシアの現代演劇の創作を目指す
ファイブ・アーツ・センターの活動
マリオン・ドゥ・クルーズ(Five Arts Centre代表)
Marion D’CRUZ
マリオン・ドゥ・クルーズ氏のインタビューの前に、マレーシアの舞台芸術界の現状について簡単に紹介しておこう。
マレーシアは、マレー系、中華系、インド系の3大主要民族をはじめとする諸民族がともに暮らす、多民族国家である。それぞれの民族が自らのアイデンティティを強く保持しながら共存するその社会は、「マレーシア型多文化社会」とも呼ばれている。例えば、初等教育においては、国語であるマレー語を使用する学校だけではなく、中国語やタミル語を使用する学校も設置され、それぞれを母語とする生徒が入学して学んでいる。また、英語も広く使用されており、国民のほとんどが複数の言語を解する「多言語社会」でもある。
このような社会を維持するには、想像を絶する困難が伴う。1969年には民族間の暴動により、多数の死者を出す事件も発生している。数的には多数派であるが経済的には弱者の立場にあったマレー系の地位を向上させるために、マレー系をあらゆる面で優遇する「ブミプトラ政策」はこうした背景から導入されたものだ。
従って、マレーシアの演劇界もこうした特質を直接反映させたものになっているといっていい。使用言語ごとに劇団はグループ化されており、グループ相互間の交流が必ずしも活発には行われていない。また、観客についても同様で、使用言語ごとに観客層は異なっている。
民族間の抗争に発展しかねないとして、民族問題や宗教問題について公の場で発言することは禁止されており、演劇についても都市ごとに置かれた検閲局の厳しい検閲が実施されている。また、「ブミプトラ政策」のもと、国からの支援はほとんどがマレー系劇団に向けられているのが現状だ。国立劇場での公演についても、海外からの招聘公演を除けばマレー語劇がそのほとんどを占めている。民間の劇団は企業からの支援を受けるなどして活動しており、彼らが公演に使用する劇場は300席程度以下の小規模なものが主となっている。しかし、2005年には初の民間経営の大型劇場施設「クアラルンプール・パフォーミングアーツセンター(KLPac)」がクアラルンプール市内に開館することになっており、その動向が注目されている。
こうしたマレーシアにおいて、20年間にわたって演劇シーンをリードしてきたアーティスト集団、ファイブ・アーツ・センターの創設メンバーのひとりであり、マレーシアを代表する舞踊家・振付家のマリオン・ドゥ・クルーズ氏にその活動について話を聞いた。
聞き手:滝口健(国際交流基金クアラルンプール日本文化センター)