国際交流基金 The Japan Foundation Performing Arts Network Japan

New Plays 日本の新作戯曲

2022.11.30
だからビリーは東京で

That's why Billy is in Tokyo

Ryuta Horai

だからビリーは東京で
蓬莱竜太

蓬莱(1976年生まれ)が座付き作家を務める劇団モダンスイマーズが2022年に初演。コロナ禍に書き下ろされた戯曲。漠然と俳優に憧れていた大学生・凛太郎は、上京してたまたまオーディションに受かったアマチュア小劇団に所属することに。作家自身の人生も左右してきた劇団という濃密な人間関係や演劇創作の現場が、凛太郎の視点とコロナによる断絶よって炙り出される等身大の群像劇。

だからビリーは東京で
だからビリーは東京で
だからビリーは東京で
だからビリーは東京で

モダンスイマーズ『だからビリーは東京で』
(2022年1月8日~30日/東京芸術劇場 シアターイースト)
撮影:松尾祥磨

Data :
[初演年]2022年

劇団ヨルノハテの稽古場で入団のための面接が行われている。凛太郎は、ミュージカル『ビリー・エリオット』の主人公がバレエダンサーを目指す姿に感銘を受けて俳優を目指したと言うが、面接のやりとりはいまいち噛み合わない。応募者がひとりだけだったことから何とか合格する。

劇団の稽古。作・演出を担う能見は台本がうまく進まず、稽古をしてみるが劇団員たちの反応は芳しくない。凛太郎だけがはじめての経験を楽しんでいる。

凛太郎の父・恒久の家。凛太郎はアルコール依存症が原因で離れて暮らしている父に俳優を目指すことにしたと報告するが、小馬鹿にされる。

劇団員の住吉と韓国人の恋人との通話をたまたま耳にする凛太郎。ふたりは文化の違いが原因で喧嘩していた。

劇団員の久保の独白。久保は、同じ劇団員で幼馴染の山路が嫌いだった。久保が好きになったものをいつも先に奪ってしまうからだ。山路の恋人である劇団員の長井も先に好きになったのは自分だった。

よくわからない台本の稽古。みんなそれなりに納得しようとするが、住吉はひとり腑に落ちないまま。稽古後は、飲み会、ドライブ、そしてカラオケ…。

父・恒久の家。父は凛太郎を人生勉強のために風俗に連れて行こうとする。そのズレっぷりに言葉を失う凛太郎。

稽古。凛太郎のテンションは高いが、住吉が降板を申し出たことをきっかけに激論となる。能見も「何を書いているのかわからない」と言い出す始末で、公演は延期。そこに振って沸いたコロナ禍──。

オンラインでの劇団ミーティング。大学を卒業した凛太郎は、ウーバーイーツで生計を立てている。長井はオンライン家庭教師の仕事が好調らしい。次回公演についての議論はそれぞれの状況が異なることもありまとまらない。

凛太郎と父との電話。父が営む居酒屋もコロナ禍で酒が出せず、出前をはじめるらしい。父は帰ってきて手伝うよう求めるが凛太郎は応じない。

凛太郎は住吉と男女の関係になっていたが、住吉は韓国の恋人とも別れていない。コロナ禍でも映画監督らとご飯会だと言って出歩く住吉に、凛太郎は違和感をもっている。

山路の独白。幼馴染の久保は昔から何も決められないから自分が決めてやってきたのだという。山路は長井と結婚するつもりで同棲をはじめたのだが、別れを切り出され唖然とする。長井の携帯を覗いた山路はLINEに残された久保との(浮気ではないが)親密なやりとりにショックを受ける。

父の家。1年ぶりに会った父は再び酒に溺れていた。帰ろうとする凛太郎に父はかつてのように暴力を振るう。東京に戻った凛太郎は、住吉が韓国語で通話しながら歩いているのを目撃する。凛太郎は、能見に電話で退団の意思を伝える。

必死で自転車を漕ぐ凛太郎。転倒して怪我をした瞬間、東京は自分にとって「まだ途中なんだと、言ってのけていい場所」なんだとハッとする。

久しぶりに稽古場に集まる劇団員。長井は家庭教師に専念するため、山路は久保とはもう一緒にいられないという理由で退団を申し出る。一方、久保は山路に対して抱えてきた思いを爆発させる。長井も凛太郎を入団させたのは頭数を増やして劇団員の経済的負担を減らすためだったと暴露してしまう。住吉もまた、来年には韓国に行くので自分もやめると言い出す。

能見は実家の事情で稽古場がなくなると告げ、最後に自分たちの話を自分たちのためにやりたいという。

冒頭の凛太郎の面接の場面が、今度は彼らが自身を演じるものとして繰り返される。

Profile

1976年、兵庫県出身。舞台芸術学院演劇科本科卒。99年に同期生の西條義将(主宰)と劇団モダンスイマーズを旗揚げし、全公演の作・演出を手がける。また、『世界の中心で、愛をさけぶ』『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』など、ベストセラー小説の舞台化戯曲も担当。人が生きていく中で避けることのできない機微、宿命、時代性を濃密な群像劇として描き、高く評価されている。2008年にはモダンスイマーズで上演した『五十嵐伝〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜』を映画化した『ガチ☆ボーイ』が公開された。09年『まほろば』で第53回岸田國士戯曲賞、17年『母と惑星について、および自転する女たちの記録』で第20回鶴屋南北戯曲賞、19年『消えていくなら朝』で第6回ハヤカワ悲劇喜劇賞を受賞。また、高い劇団力が評価され、団体として12年に第67回文化庁芸術祭優秀賞を受賞。

モダンスイマーズ
http://www.modernswimmers.com/