国際交流基金 The Japan Foundation Performing Arts Network Japan

New Plays 日本の新作戯曲

2004.12.6
赤鬼

The Red Demon (Akaoni)

Hideki Noda

赤鬼 Akaoni
野田秀樹

『RED DEMON(赤鬼)』
(2003年/英国・ヤングビック劇場/ 作・演出:野田秀樹)
photo by Keith Pattison

Data :
[初演年]1996
[幕・場面数]16
[キャスト数]4 人(男3 ・女1 )

 これは「フカヒレのスープを呑んで死んだ」女の話である。

 「あの女」と白痴の兄とんび、あの女を狙う嘘つきのミズカネの3 人が、離島の浜に打ち上げられる。「あの女」はフカヒレのスープを与えられるが、それは船上で呑んだものと味が違うと言い、後日自殺する。とんびが、その死んだ妹について回想をする形で芝居が語られていく…。…ある日浜に赤鬼が現れる。村八分にされている「あの女」が呼び寄せたという偽りの噂が広まる。その日、ミズカネは、「あの女」の家で「あの女」に言い寄っている。と、その家に潜んでいた赤鬼を発見する。喰われると恐れるが、人間ではなく花を食べることを知る。ある晩、赤鬼は赤ん坊を悪気なく連れ去る。村人はパニックに陥り、花を使って赤鬼を洞窟におびき寄せる。長老とミズカネ、「あの女」が話し合い、7日間赤鬼に手を出さないという条件で、赤ん坊を返させることにする。

 ところが、赤ん坊が救出されると、村人は洞窟を襲撃する。そして赤鬼が壁に描いた楽園の絵を見て驚く。「あの女」は、これは「海の向こう」を描いたものであり、赤鬼は神なのだと言う。村人は約束を守ることにする。その猶予期間中、「あの女」は赤鬼に自分のことばを教える。ある日、とんびは海上に見慣れぬものを発見するが、興奮のあまり何であったのかを忘れてしまう。程なくして赤鬼は村人に受け入れられるようになり、見物の対象となる。「あの女」は赤鬼が人間ではなく、見世物として扱われていることに憤る。

 半年後、とんびは自分が見たものが大きな船であったことを思い出す。村人は、その舟が赤鬼の仲間の舟ではないかと思い、襲撃されることを恐れ、赤鬼と「あの女」を裁判にかける。二人は死刑を宣告される。刑の執行を待つ洞窟の中、「あの女」は赤鬼が書いた文字から、鬼たちが理想の土地を求めて航海を続けており、赤鬼は浜がその理想の地であるのかを確認しに来たということ、赤鬼が死んだと思い船はすでに遠ざかってしまったことを知る。

 ミズカネととんびは船と合流しようと、「あの女」と赤鬼を救出する。4人は船出するが、船はもういない。食べ物が底をつき、飢餓が進む中、彼らは狂乱状態で陽気になっていき、最初に赤鬼が死ぬ。

 物語は最初の場面へ。命を救われた「あの女」は、飢餓で朦朧とした中、ミズカネが船上で呑ませたスープのフカヒレは赤鬼の肉であったことに気づく。かつて赤鬼に「あんたは、人間を食うから鬼なのよ」と言ったことを思い出す。だが本当は「人が生きるために鬼を食べるのね」と悟る。絶望した「あの女」は自殺する。

 とんびはこう締めくくる。「海の向こうには、妹の絶望が沈んでます」。

Profile

東京大学在学中の1976 年に夢の遊眠社を旗揚げ。数々の名作を生み、80 年代にブームとなった小劇場演劇のトップランナーとして脚光を浴びる。現代と神話の世界を行き来するような、時間と空間の飛躍する劇構造と冗舌な言葉遊び、走り回るような演技スタイルで、時代の寵児となる。1992 年に劇団を解散。
ロンドン留学を経て、93 年にNODA ・MAP を設立し、人気俳優をキャスティングしたプロデュース方式でワークショップによる芝居づくりを行い、次々に話題作を発表。また、歌舞伎の脚色・演出や海外の俳優との国際共同製作を行なうなどの意欲的な試みも行なっている。岸田戯曲賞や朝日舞台芸術賞など多くの演劇賞を受賞。「赤鬼」でタイ、イギリス公演を行なうなど海外にも進出。

http://www.nodamap.com