Artist Interview アーティストインタビュー

Calling out with words and the body
Mikuni Yanaihara’s pursuit of reality
dance
言葉と身体で叫ぶ
矢内原美邦のリアル
1970年生まれの矢内原美邦は、同世代の観客に訴える身体性と、映像や音楽などのクリエーターとのコラボレーションによりコンテンポラリーダンスの新境地を拓いた振付家・演出家である。その後に登場したチェルフィッチュの岡田利規(73年生まれ)などゼロ年代(2000年以降に台頭したアーティスト)と呼ばれるアーティストたちと共に語られることの多い矢内原だが、彼らに共通しているのは、バブル景気崩壊によってもたらされた既存の価値観の喪失と見えない方向性という時代感覚だ。大きな物語は語らず、身近な出来事をモチーフにさまざまなアプローチで生きていることのリアルを表現に求め、世界に対する違和感をぶつけて観客の共感を呼んできた。1997年、映像学校で知り合った映像や音響、衣装、照明のクリエーター仲間と共にパフォーミングアーツ・カンパニー「ニブロール」を結成。代表兼振付家として活動を始めた矢内原は、高橋啓祐の圧倒的な映像をはじめ同世代のクリエーターそれぞれの表現が交錯する空間で、走り、ぶつかり、足掻き、苛立ち、叫ぶというアンバランスな身体によってリアルを追求してきた。2005年から「ミクニヤナイハラプロジェクト」として劇作にもチャレンジし、2012年には『前向き!タイモン』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。ニブロール結成から15年、矢内原のリアルがどのようにつくられていったのか、その歩みを聞いた。
聞き手:岡崎松恵(NPO法人Offsite Dance Project 代表)