Artist Interview アーティストインタビュー

Portraying the tough but humor-filled lives of an ethnic minority
An interview with the Japan-resident Korean writer Chong Wishing
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マイノリティたちのタフでコミカルな生き様を描く在日コリアンの人気作家・鄭義信
鄭 義信
舞台と映画の領域をまたにかけた旺盛な創作活動で注目される鄭義信(チョン・ウィシン)。彼は、朝鮮半島から日本に渡った移民を祖父母にもつ日本生まれの「在日コリアン」三世であり、その群像劇には自らの人生に裏打ちされた、たくましく生きる人々の笑いや記憶が満ちている。
「在日コリアン」には、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)籍をもつ人、韓国(大韓民国)籍をもつ人、日本に帰化し、日本国籍を取得した人がいるが、外国籍をもつ人は2002年現在で約62万人を数える。日本の現代文化の一角を担う人も多く、劇作家では、鄭義信以外に、つかこうへい、柳美里(現在は小説家に転身)がいる。
日本は戦前の帝国主義時代、朝鮮を植民地として支配した時期があり、多くの朝鮮人が徴用、徴兵として日本に強制連行され、労働力として搾取され、戦争に駆り出された。そうした人たちに加え、日本に新天地を求めて多くの人々が移住し、現在の「在日コリアン」のルーツとなっている。彼らは、「日本名」に改名させられるなど、日本人による差別が厳然とある中、日本で暮らしつづけてきた。
戦後から60年以上がたち、現在は差別が全くなくなったわけではないが、植民地を支配していた日本の帝国主義時代を知らない若い世代も多くなった。それに伴い「歴史的事実」が忘れられ、またそれを曲解する反動的な動きも日本国内にはある。一方、2002年の日韓共催によるサッカーのワールドカップ以降、文化交流は加速度的に進み、近年は韓国のテレビドラマが日本の主婦層を中心に大人気となる“韓流ブーム”を巻き起こすなど、新たな関係が築かれつつある。また、日本のメディアも韓国・朝鮮人の人たちの表記を「日本語読み」ではなく、「朝鮮語読み」とするのが当たり前になってきた。
こうした新時代の人気作家として、今年は4作もの新作を書き下ろした鄭義信。来年5月には「ソウル芸術の殿堂」と「新国立劇場」の共同制作により、時代に翻弄されながらも日本で焼き肉屋を営む在日コリアン一家のタフな生き様を描く『焼肉ドラゴン』(演出:梁正雄・鄭義信)の公演も決まっている。そんな彼の原点に遡って話を聞いた。
聞き手:小堀純