- 日本では南アフリカの舞台芸術事情はあまり知られていません。まずマースさんが支配人をしておられるアーツケープの概要から教えてください。
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歴史的な背景からお話しすると、アーツケープの前身は「ケープ・パフォーミングアーツ・ボード」(以下、CAPAB)でした。CAPABは、演劇、オペラ、バレエ、オーケストラのプロダクションのカンパニーとして1967年に発足しました。劇場の運営と作品制作のための資金はすべて南アフリカ政府から出ていました。ここでプロデュースされた作品はクオリティーの点からみても素晴らしく、国際的水準の舞台を生み出せるカンパニーだったと思います。
1994年の初の民主主義的な総選挙により、南アフリカ共和国の政治ではさまざまな変革が行われたわけですが、芸術の分野も例外ではありませんでした。当時、南アフリカでは4つの舞台芸術の組織が──ケープタウン(CAPAB)、ブルームフォンテーン、プレトリアとダーバンという主要都市に1つずつあって──政府からの舞台芸術に関する補助金の大部分を受け取っていました。
新体制となり、より多くの南アフリカの人々に、より公平に資金を配分するための制度が政府により導入されました。4組織が主に使っていた資金は、「ナショナル・アーツ・カウンシル」という新たに設立された組織にまとめて与えられ、ナショナル・アーツ・カウンシルが南アフリカのより多くの芸術団体に平等に資金を分配することになりました。
その結果、4組織は次の解決策のいずれかを選択せざるを得ないことになりました。 a) 資金を調達し、カンパニーの一部として芸術制作団体(アート・フォーム)を維持する。 b) 所属する芸術制作団体を解散する。 c) 芸術制作団体はインフラ面での支援体制を受けながら、自ら資金を調達していく──といった選択肢です。
1997年に私が支配人に着任した時、CAPABには800人もの雇用者がいました。その中には、オペラ歌手、演劇の俳優、オーケストラの演奏者、バレエやコンテンポラリーダンスのダンサーたちなど、たくさんのアーティストが含まれていました。
CAPABの財政状況はよくなく、自由になる限られた資金では劇場と芸術制作団体の双方を維持することはできない、と私は判断しました。しかし、今までと違った芸術制作団体も好ましくないし、長年かかって培い蓄積してきた経験が失われるのはもったいない……。
そこで、私たちは芸術制作団体を分離し、それぞれが独立した運営機能を持って作品制作のための資金を探すという形をとりました。「ケープタウン・オペラ・カンパニー」「ケープタウン・シティ・バレエ団」「ジャズアート・コンテンポラリー・ダンス・シアター」「ケープ交響楽団」の4つです。
演劇の分野でプロの劇団をつくるということは、私たちのところのみならず国内全般に当てはまるのですが、カバーできなかった点です。役者たちはカンパニーに所属していたとしてもフルタイム雇用ではなく、しばしば1つのプロジェクトから次のプロジェクトへ渡り歩くという形で活動しています。南アフリカにはたくさんのフリーランスの俳優がいますが、彼らが演劇を学びながらいろいろな作品に出演して知識を増やし経験を重ねることができる仕組みがまだありません。
アーツケープは、事務部門のインフラ、財政的人的な資源のマネージメント、劇場のスペースの割り当て、それから他の運営面技術面での支援を提供することによって、分離した芸術制作団体を援助しています。
アーツケープが政府から受け取る助成金は、劇場の運営費、劇場のインフラストラクチャーを動かしていく経費、舞台技術および劇場運営のスタッフの費用などに充てられています。現在のこのスタイルは、(カンパニーをもたない)日本の多くのコンサートホールや劇場に似ていると思います。 - 「劇場(THEATRE CENTRE)」として再出発したわけですね。
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1999年、「CAPAB」の組織は「アーツケープ」となり、制作団体から劇場へと完全な変身を遂げました。新しいスローガンは「芸術を人々へ、人々を芸術へ」。新しいヴィジョンは、芸術作品をより大きな枠組みの中で提供していくこと。そこで、以前は目を向けていなかった芸術制作団体を、分離・独立した古典的な分野の芸術制作団体と共に組み込んでいき、また、自分の作品を上演したいと希望する演劇のグループやプライベートのプロデューサーたちに劇場のスペースをレンタルするということで、劇場で上演される演目の多様化を図りました。過去にはオペラ、バレエ、オーケストラ、演劇が中心となっていましたが、現在は、さまざまな芸術制作団体による幅広い作品を提供できるようになりました。
しかし、真の多様性に到達するためには、さらに南アフリカ固有の舞台芸術を育み発展させていかねばなりません。日本には高い水準に達した能や歌舞伎のような舞台芸術があって、多様性があると思います。 - 観客の育成、アーティストの養成といった面ではどういう活動をしていますか?
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アーツケープは単なる芸術制作団体の集まりではありません。観客育成、コミュニティーへのアウトリーチ、教育の面で重要な役割を果たしています。私たちの目的は、人々を劇場に連れてきて、そして劇場を人々に届ける、ということです。
1994年より以前、南アの社会の大部分の人々は舞台芸術から閉め出されていました。彼らはバレエ、オペラなどの公演を見たことがなく、可能性に満ちた人たちが自分の芸術的才能を伸ばす機会もありませんでした。
アーツケープではいろいろな活動をしていますが、その中でも2002年に新たに設立した「リソース・センター」は、こういった未知の才能に着目して育み、より広い活躍の場を提供し、技術と才能の宝庫をつくり上げようというものです。トレーニング・プログラムには、コンピュータ関連の講座や、読み書きの教室もあります。そういう人たちがコンピュータに触れてデータ・ベースへアクセスしたり、いろいろなアートのアーカイブを利用していってもらうためです。舞台芸術に関する多方面のトレーニング・コースは、しばしば第三者機関との協力により行われています。
常に努力しているのは、黒人のアーティストたちに機会をつくり、演技やオペラ、合唱といった彼らの自然な才能をもっとも発揮できるような芸術制作団体を育成していくことです。現在すでに多数の国際的水準のオペラ歌手と舞台俳優が現れています。
私たちの劇場はまた、コンテンポラリーダンスにも力を入れています。ダンスには異なる文化のグループに橋をかけ人々を結びつけていく素晴らしい作用がありますからね。
アーツケープは他にも2つのトレーニング・プログラムを開設しました。「ニュー・ライティング・プログラム」は、書く才能はあるがまだ書くのに必要なことを学んだ経験のない人を対象にしています。教室に参加して脚本を書き、良いものに仕上げていきます。場合によっては、とても良い脚本は、トライアル上演(ショーケース)が行われ、観客の前で公開されることもあります。これまでに2本の作品が4年間の準備期間を経て完全上演まで至るという成果を上げています。
2つ目は舞台の技術スタッフ養成のための2年間のプログラムです。舞台技術を若い人たちが学ぶ機会は、学校での講座はもとより実技研修コースのようなものさえも国内にはほとんどありませんでした。現在、劇場で舞台技術者として働いている人々の多くは、現場で学んで成長してきた人ばかりです。研修プログラムでは、劇場構造のいろいろ、音響デザイン、照明デザインといった劇場の技術サイドのあらゆる事項について学びます。現在8人の研修生がいますが、研修終了後、何人かはアーツケープのフルタイムのスタッフに選ばれると思います。パフォーミング・アーツの他の分野で活躍する人も出てくることでしょう。 - 南アでの芸術に対する資金援助はどのような状況なのでしょうか?
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現在、お金を集めることが難しくなっています。この状況は、日本の1980年代と比べることができると思います──たくさんの建物、たくさんの劇場、たくさんのコンサートホールが建てられました。しかし、劇場の中の芸術作品にかける十分なお金はなかった──私たちも同じような状況なのです。
我が国ではまだ、私企業が芸術にお金を出すという成熟した文化的慣習が確立していません。資金は、ナショナル・アーツ・カウンシル、国の宝くじ基金、またある時は地方自治体からも回ってきますが、往々にして舞台芸術制作団体を立ち上げて維持していくには十分ではありません。
その上、芸術制作団体の数が非常に増加したために、限られた資金を得るための競争も激化しました。1996年より政府はより幅広い層にその資金を配分するという政策をとってきました。多くの場合、それぞれの組織が手にする金額が小さすぎて、何か意味のあるものを達成することができません。芸術の発展により人々がひとつになりアーティストの雇用の機会が広がる可能性があるというのに、それに必要な資金源が十分でないということは悲しいことです。
日本は非常にいい状況にあると思います。「ソフトウェア」に投資する、という必要に対する認識があるからです。これは重要なステップで、私たちもそれに向かって動き出し、なるべく早くそこに到達する必要があります。
アーツケープの根本はここにあります。劇場の建物とインフラの面倒を見るのは私たちです。しかし、もし劇場に生きた芸術作品がなければ、劇場は何の意味ももたなくなってしまうのです。
アーツケープが採用したスタイルは、政府より得た予算を劇場の建物やインフラのような「ハードウェア」のための費用とし、しかし「ソフトウェア」(芸術作品)を感動的な生きたものに保つためには資金を集めねばならない、というものです。
- 現在のアーツケープの資金について具体的に教えてください。
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政府からは年間2,100万ランドの予算が出ています(邦貨換算約3億8,000万円)。額はここ数年そう増えてはいません。私たちの劇場の年間総予算は約3,400万ランドです。これは全体の予算で、この中に芸術関係の費用も含まれています。私が試みているのは、政府から受け取った資金を核にして、そこから芸術や芸術の育成ため、それから特にこれまで育ててこなかった分野のために使うさらなるお金を生み出していくということです。
1995年の800人の従業員に対し、現在のフルタイムの雇用者は66名、短期契約者は22名です。舞台スタッフについては、上演作品に応じて外部から臨時に必要な増員をすることも多いです。私の運営哲学は、組織のインフラ自体はむしろ小さめに抑え、私たちが生み出したり政府からもらったりした追加のお金は、それはパフォーミング・アーツのため、“ソフトウェア”のため、教育やトレーニングのために使っていきたい、ということなのです。
- 観客育成・教育についてもう少し詳しく聞かせてください。
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芸術を学校生徒に紹介していくことは非常に重要なことだと考えており、私たちの観客育成・教育部門は学校の子どものためのプログラムをいくつかスタートさせました。
私たちはまた、学校の必須科目に演劇を導入し、学校のカリキュラムの3つの公用語の中に組み込まれています。私たちの地域には3つの公用語があり、それらは英語、アフリカーンス語、コサ語です。勉強した作品は劇場でプロデュースされて上演され、生徒たちは劇場に来て、自分たちが読んだ作品が舞台上でどう生きた作品になるか見ることができます。教育の専門家によると、私たちがコサ語での演劇の時間を始めたところでは、試験の合格率が上がったということです!
- こういったプログラムのためには予算が必要と思います。政府からの予算が減少していく中、どのようにして資金を捻出したのですか?
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企業からの資金、ナショナル・アーツ・カウンシルからの援助、国の宝くじ基金によるお金、他の政府機関からの追加の資金援助を得ようと努力しています。日本には「新世紀アーツプラン」というアートカンパニーに対する助成事業があるそうですが、それと似た状況に変わっていくために、南アの芸術に関する資金環境を見直していく必要があると思います。
- アーツケープはNPOだと聞いております。NPOは英国、米国など国によって微妙に位置づけが違うようです。南アにおいてNPOはどのように定義されていますか?
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NPOは、南アでは基本的に「所得税を払わない」ということです。利益が上がっても、それにかかる税金はありません。しかし政府が母体の組織として、私たちは財政について透明性を保たねばなりません。残念ながら資金提供者側に関する税金の優遇措置はありません。
- アーツケープは組織としてはNPOですが、「貸し劇場」あるいは「商業劇場」と呼べる部分もあるかもしれません。
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政府による変革によって私どもの劇場は自主制作の劇場から貸し劇場へと大きく転換しました。アーツケープは貸し劇場として舞台空間を貸し出して1年365日稼働し、利益本位の運営をすることができます。しかしそれでは、舞台芸術のアーティストたちの人生に変化を与えたり、舞台芸術産業に付加価値を付け加えたりすることはできません。半面、自主制作だけの劇場であったとしたら舞台空間を貸すことができず追加のお金を入手することは不可能となり、さらなる資金の調達が必要となってしまいます。ですから、アーツケープの路線は、舞台空間を貸す商業劇場であると同時に、パフォーミング・アーツが必要としているもの応えていく、ということです。このバランスは微妙なものがあります。ある時はどちらかといえば商業劇場の面が強くなって助成を受けているグループの公演が少なくなり、またある時はその反対、というように。2つの間でちょうどよくバランスがとれるよう工夫して予算を編成し、別枠のお金が入ればそれをパフォーミング・アーツのほうへ還元するようにしています。
- そのようなバランスを保つための方針の決定の主導権は誰が握っていますか?
- 支配人(Chief Executive)である私が、理事会と連携をとりながら決定します。理事会には9名の理事がおり、理事は芸術文化省により任命されます。理事会は、演劇、教育、ビジネス、法曹界の専門家で構成されています。
- 大きな変化の後、オペラ、バレエ、オーケストラの3つのカンパニーは独立したわけですが、これらのカンパニーの運営などについて、アーツケープはどのような関係にありますか?
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私たちはそれぞれのカンパニーと密接な関係を保っています。それぞれの力を合わせ、うまく進めています。私とオペラ、バレエ、そしてオーケストラなどのトップとは定期的にミーティングを行い、劇場での上演に向けてのプランが練られます。というのも彼らが出してくる舞台技術面での課題はアーツケープの劇場に関係してくるからです。「協力(cooperation)」「協業(collaboration)」「相乗効果(synergy)」の3つの原則が私たちを1つに結びつけています。また、他の演劇などのカンパニー、教育機関や地元の芸術団体などとの関係もこの3原則の上に成り立っています。私たちから資金提供ができない分、お互いに協力しあって、共に制作したり、知識や資源を共有したりしていかねばなりません。
- アーツケープは劇場複合施設ですね。建物の中にはどのような施設がありますか?
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私たちの施設には1,187席の「オペラ・ハウス」、540席の「アーツケープ・シアター」、160席の「アーツケープ・アレーナ」とキャバレー・スタイルの劇場があります。また、オペラ、バレエ、オーケストラ、コンテンポラリーダンスやその他のさまざまなカンパニーのためにオフィス、そしてあるいはリハーサル室を提供しています。私たちはインフラに関して全面的なサービスを提供し、多くのアーティスト、多くの芸術団体に資することができます。南アフリカ共和国で芸術とアーティストとが花開くため、できうる限りのことをしています。
コスチュームを製作や保管をする衣裳部門もあり、地元のカンパニーや海外の市場に貸し出しも行っています。日本のカンパニーの公演のための衣裳と舞台装置を作ったという話もあります。舞台装置を製作する部門もあります。舞台セットについても広い保管スペースがあります。このようなノウハウを海外市場に売り込み、それで外貨を獲得しようとしています。
- ケープタウン・オペラ・カンパニー、ケープタウン・シティ・バレエ団には舞台美術部と衣裳部がないということですね。カンパニーの構成員数や運営方針を教えてください。
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アーツケープは彼らの舞台装置と衣裳を有料で提供しています。彼らの仕事は「舞台に作品をのせる」ということです。このためにケープタウン・オペラ・カンパニーには全部で12〜14名、ケープタウン交響楽団は6名、ケープタウン・シティ・バレエ団は3名、ジャズアート・コンテンポラリー・ダンス・シアターには3名の常勤スタッフがいます。そのほとんどが運営部門で、アーティストやオペラ歌手は必要に応じて招集されます。ケープ交響楽団、ケープタウン・シティ・バレエ団には固定メンバーがいます。
4年前、国内には5つのオーケストラがありました。現在は2つだけです。他の3つは資金難で閉鎖してしまいました。常設のオーケストラのうち1つはケープタウンに、もうひとつはダーバンにあります。ヨハネスバーグにはありません。ヨハネスバーグにはフリーランスの音楽家がたくさんいて、必要なときに彼らを呼んで編成しています。ケープタウン・オペラ・カンパニーは南アで唯一の常設のオペラ・カンパニーです。バレエではケープタウンとヨハネスバーグに常設カンパニーがあります。
- アーツスケープの上演スケジュールをウェブサイト上で拝見しました。非常に多くの公演が行われていますね。1年間で何公演くらいありますか?
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昨年は120以上のカンパニーによる約800回の公演が行われました。ステージがいつも埋まっているので普通の練習には舞台を使用できないんですよ。ステージでの舞台稽古は本番の直前に限られています。リハーサルに必要なスペースを確保するため、別な建物が必要な段階になりました。
- ケープタウン・オペラ・カンパニーはオスロの劇場と共同制作を行ったことがありますが、他の劇場ともっと共同制作したいとお考えですか? 市場としてはどのエリアに興味をお持ちですか?
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海外との交流はこれからの分野ですね。ケープタウン・シティ・バレエ団は2002年に中国公演を行いました。上海の国際舞台芸術祭に参加し、南京での公演の後、北京へ行きました。ロシアのカンパニーから振付家と何人かのプリンシパルが南アフリカに来て共同制作を行ったこともあります。どこに行きますかと訪ねられたら、可能性がある場所ならどこでも、と申し上げておきましょう。
ケープタウン・オペラはヨーロッパで高い評価を受けていますが、合唱の歌手たちによるところが大きいと思います。もし文化交流の機会があって日本へオペラを運ぶことができたらいいですね。
- アーツケープの劇場に来る観客のほとんどは社会である程度恵まれた階級に属しているかと思いますが、オペラ、バレエ、オーケストラ、演劇のチケット料金はどのくらいなのでしょうか?
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演劇のチケットはリーズナブルでなくてはなりません。音楽の聴衆のほうがアプローチしていき易いかと思います。バレエのチケットはそう高くはありませんが、オペラのチケットは約200ランドします。平均月収がそれほど多くないこの国では、相当高価です。しかし、ロビン・ウィリアムスがコンサートをしにやって来た時のチケットはどんなに高くてもファンが買っていましたしね。
現在の南アにおけるひとつの問題は、学校で芸術教育にプライオリティーがないことでしょう。昔は音楽の先生がいる学校も数多くありました。しかし今はほとんどいなくなってしまいました。いま学校で重きを置いているのは読み書き算数です。先生対生徒の比率は大変高く、35人の生徒を1人の先生が受けもっています。芸術にあまり関心がないか資金のない学校でしたら、芸術関係の先生を置かずに、勉強の学科だけになってしまう。学校で芸術、舞台芸術に接する生徒はほんのわずかと言ってよいかと思います。人々が芸術と触れ合わず、芸術の鑑賞や理解の仕方を学ぶことができずに大人になってしまうのは問題です。そういう意味からも、私たちが行っている演劇の授業は意義があると思います。私たちは学校に芸術をもたらそうと試みているのです。合唱をやる学校も多くなりました。少数の学校ですが、演劇や音楽のクラスもあります。ケープタウンには幸運なことに楽器演奏教授法を教えている教育学部の後援で3つの音楽センターが運営されています。こういうところでは放課後の時間にトレーニングをしています。
私は金沢でコンサートを見学して本当に驚きました。オーケストラ・アンサンブル金沢という小規模なアンサンブルでしたが、オーディションで選んだ人たちと一緒にコンサートを行っていました。金沢の4つの大学から80人が招待されて演奏に加わりました。この学生さんたちは音楽の専攻ではなく、普通に工学やなんかを勉強している人たちなのです。1つの都市に80人もそういう人がいるなんて。やっぱり小さい時から舞台芸術に触れるという環境が大事なのですね。舞台芸術への関心と愛着を喚起して育んでいくにあたって、アーツケープのような機関が果たす役割は大きいのです。
- ケープタウン・オペラ・カンパニーは1年間にどれだけの演目をかけますか?
- 平均して年間9つの作品を上演しています。当然のことながら、上演作品数は資金によって左右されます。もしさらに資金があれば、作品数はもっと増えるでしょう。ほとんどの作品はアーツケープで上演されますが、例外もあります。外の劇場で上演する場合も、私たちは技術的なことでの支援や他のインフラの提供などを行っています。オペラのシーズンにはバレエの作品のレパートリー公演がオペラ上演の合間に行われます。
マイケル・ジョージ・マース
南アフリカの総合文化センター
ARTSCAPEの取り組み
2006.03.29
マイケル・ジョージ・マースMichael George Maas
ARTSCAPE 支配人
聞き手:田中伊都名
ARTSCAPE
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tel: +27 (0) 21-410-9800
fax: +27 (0) 21-421-5448
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