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2018.7.20

フランスで第72回「アヴィニヨン演劇祭」開幕(2018年7月6日〜24日)

 本年度のアヴィニヨン演劇祭は欧州の作家を中心にプログラム。ディディエ・ガラス、レイムンド・ホッヘ、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ、サシャ・ヴァルツ、ミロ・ラウなどのビッグネームがずらりと並んでいる。欧州外からは、現在ミュンヘン・カンマーシュピーレのレジデンス・アーティストも務めるイランのアミール・レザ・コヘスタニやエジプトのアーメド・エル・アタールなどが参加。アタールは、アヴィニヨンと同時開催されているフェスティバル・オフでアラブ諸国の小劇場作家を特集する「アラブ・フォーカス」のプログラミングも担当している。
 オリヴィエ・ピィが芸術監督を務めるようになってから、物語演劇の上演が特徴のひとつになっており、今年の法王庁広場でのオープニングには1982年生まれの演出家トマス・ジョリー(国立ストラスブール劇場のアソシエートアーティスト)によるセネカ作『テュエステス』が選ばれた。
 注目作のひとつが、スイス人演出家ミロ・ラウが2012年にベルギーで実際に起きた同性愛男性の殺害事件を描くドキュメンタリー演劇『ラ・ルプリーズ』。被害男性が真冬の街中でどのように襲われ、どれほど凄惨な暴力を受けて死に至ったかを、舞台上で精緻に再現(ルプリーズ)し、リアルな悲劇が展開される。
 リール出身の演出家ジュリエン・ゴスリンは米国人作家ドン・デリーロの小説を翻案し、『Players, Mao II, The Names』という10時間に及ぶ大作を発表。3部にわかれた本作にはテロリズムや暴力といったテーマが通底している。
 若手作家による作品には、2017年度のフェスティバル・インペイシエンスの観客賞と審査員賞をダブル受賞したフランスのアーティスト・コレクティブ<Les bâtards dorés>による『Medusa』や、1985年生まれの演出家・劇作家・作曲家・美術作家のニノ・レスネによる分野横断的なパフォーマンス『Romances Inciertos, Another Orlando』などがラインナップされている。

[フェスティバル概要]
1947年、ジャン・ヴィラールによって創設された新作発表の規模、数、質において欧州で1、2を競う舞台芸術フェスティバル。2004年からアソシエート・アーティスト制度を採用し、毎年異なるアーティストがプログラムの選定を務めている。近年の総演目数は40前後。メイン会場であるパレ・デ・パップ(法王庁宮殿)の中庭、キャリエール・ ドゥ・ブルボン(石切り場)など、アヴィニョン市内約20カ所のさまざまな施設で上演が行なわれ、ほぼ市の人口に匹敵する10万人が町を訪れる。プレス各紙は毎年アヴィニョン演劇祭特集ページを組み、連日舞台評を掲載。2005年のヤン・ファーブル作品のように時には演劇界あげての大論争に発展することもある。演劇祭開催と時を同じくして「アヴィニョン演劇祭OFF」(http://www.avignonleoff.com/)と呼ばれる数多くの公演も行われる。オフは自由参加制。また、舞台芸術以外にも、展示会、コンサート、詩の朗読、などさまざまなイベントが開催され、期間中は町全体が祭りの雰囲気に包まれる。2013年度に演出家オリヴィエ・ピィが芸術監督に就任。2014年には宮城聰演出『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』、また日本の俳優たちをフランスの巨匠クロード・レジが演出したメーテルリンクの『室内』が上演された。

アヴィニョン演劇祭(Festival d'Avignon)
http://www.festival-avignon.com/en/