第69回「アヴィニョン演劇祭」開幕(2015年7月4日〜25日)
毎年7月に南仏の古都アヴィニョンで開催される世界最大規模の演劇祭。2013年からオデオン座の芸術監督であった演出家オリヴィエ・ピィがディレクターに就任。昨年は、アンテルミタン(舞台芸術・視聴覚産業に携わるフリー労働者)の失業補償制度の改変に反対するストライキの影響により、日本から招聘されていた宮城聰演出『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』の本会場での公演が一部中止されるなど波乱のフェスとなった。
2015年は38作品が正式招待で参加。オリヴィエ・ピィは、メイン会場であるパレ・デ・パップ(法王庁宮殿)の広場でシェイクスピアの『リア王』を演出。70歳を超えてなお大胆な挑戦を続けるポーランドの巨匠演出家クリスチャン・ルパは、オーストリアの劇作家で小説家のトーマス・ベルンハルトによる『木を刈る』(1984年)を改訂演出。ルパは以前、ベルンハルトの『混乱』の演出も手掛けている。
前衛的言語感覚でフランス現代演劇界を牽引してきた劇作家・演出家・画家のヴァレリー・ノヴァリナは新作『Le Vivier des noms』を発表。ドイツの演出家トーマス・オスターマイアーは『リチャード3世』を上演する。若手では、イスラエルの音楽家デュオで2011年に演劇デビューを飾ったWinter Familyが、彼らにとって2作目となるドキュメンタリー演劇『No World/FPLL』を発表するほか、ポルトガルの演出家ティアゴ・ロドリゲスが『アントニーとクレオパトラ』を演出する。
[概要]
1947年に俳優で演出家のジャン・ヴィラールが創設。ヴィラールは、演劇はあらゆる社会階層にむけて開かれるべき芸術であるという「民衆演劇運動」の理念を実現すべく、かつて教皇庁が置かれていたフランス南東部に位置するアヴィニヨンで野外演劇祭を開始。軍事力や政治力ではなく、演劇こそが個々の国の「文明の偉大さを検証する尺度である」と宣言。戦後、ストライキのあった1968年を除き、毎年、開催。2004年からアソシエート・アーティスト制度を採用し、毎年異なるアーティストがプログラムの選定を務めている。近年の総演目数は40前後。メイン会場であるパレ・デ・パップ(法王庁宮殿)の広場、キャリエール・ドゥ・ブルボン(石切り場)など、アヴィニョン市内約20カ所のさまざまな施設で上演が行われ、ほぼ市の人口に匹敵する10万人が町を訪れる。プレス各紙は毎年アヴィニョン演劇祭特集ページを組み、連日舞台評を掲載。2005年のヤン・ファーブル作品のように時には演劇界あげての大論争に発展することもある。演劇祭開催と時を同じくして「アヴィニョン演劇祭OFF」(http://www.avignon-off.org)と呼ばれる数多くの公演も行われる。オフは自由参加制。また、舞台芸術以外にも、展示会、コンサート、詩の朗読、などさまざまなイベントが開催され、期間中は町全体が祭りの雰囲気に包まれる。2013年に演出家オリヴィエ・ピィが芸術監督に就任。2014年には宮城聰演出『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』、また日本の俳優たちをフランスの巨匠クロード・レジが演出したメーテルリンクの『室内』が上演された。
- アヴィニョン演劇祭(Festival d’Avignon)
- http://www.festival-avignon.com/en/